マチノコト

2014.7.25

地域課題×アートプロジェクト!アートとまちづくりの未来について考える [マチノコトオープンゼミ]

コミニュティデザインに関わる様々な現場で活躍されているゲストの方から最新事例から学び、その後参加者同士で意見交換を行って勉強会「マチノコトオープンゼミ」。

第二回目のテーマは「アートとまちづくりの未来について考える」と題し、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」の企画運営を行ったBEPPU PROJECT前事務局長の、林曉甫事務所代表の林暁甫さんをゲストをお呼びしました。

アートと地域にはどんな関連があるのか、アートはどのようにして地域に結びつけることが出来るのか。アートプロジェクトによって、どのように地域にコミュニティが醸成され、新しい動きとなるのか。そんなことを参加者のみなさんと考えました。

こちらはその回の資料です。


 

現代アートって何?

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まずは林さんによる基本的な現代アートとはどういったものを指すのか、という説明から。現代アートとはざっくりいうと以下のようなものを指すそうです。

  • 同時代性
  • 現代社会の情勢や問題を反映
  • 美術史や社会への批評性
  • 既存の美術や芸術の概念にとらわれない

「個人がただ作りたいものや、ただ技術的に優れたものは現代アートではあまり見られていません。どんなコンセプトが込められた作品なのか。歴史的価値観、社会問題や環境問題、性や食など私達の生活に関わる要素のうち、何を咀嚼しているものなのか。そういったものが見られています。」

現代アートとはこういうもの、ということに触れた後は、アートプロジェクトの説明へと入っていきます。

アートプロジェクトとは

アートプロジェクトは、「現代美術を中心に、1990年代以降、日本各地で展開されている共創的芸術活動。ただ作品を展示するのではなく、同時代の社会の中に入り込み、個別の社会事象と関わりながら展開される。(出典:「日本型アートプロジェクトの歴史と現在 1990年→2012年」)」ものだと説明されてます。

「日本中でアートプロジェクトは行われていますが、これは海外のアートプロジェクトと比較すると特殊な状況にあります。これは全国のまちづくりやリノベーションプロジェクトのあり方、社会経済状況について日本独自の課題があるため。特殊ですが、先駆的な状態とも言えます。」

ではどういったものがアートプロジェクトになるのか。林さんは文献から以下のような特徴を挙げました。

・制作のプロセスを重視し、積極的に開示されている
・プロジェクトが実施される場やその社会的状況に応じた活動を行う
・様々な波及効果を期待する、継続的な展開
・さまざまな属性の人が関わるコラボレーションとそれを誘発するコミュニケーション
・芸術以外の社会分野への関心や働きかけ

その活動は、美術家たちが廃校・廃屋などで行う展覧会や地域づくり、野外 / まちなかでの作品展示や公演を行う芸術祭、コミュニティの課題を解決するための社会実験的な活動など、幅広い形で現れるものを指すようになりつつある。

(出典:「日本型アートプロジェクトの歴史と現在 1990年→2012年」)

プロセスが公開されるというのも、現代美術のひとつの形。人が実際に街に住んで作品を作るなんてことも。また、参加型で作品を制作することもあり、林さんいわく、ワークショップを活用して作品を作る現代アーティストも少なくないんだとか。

オープンプロセスや参加型の作品づくりも現代美術の特徴と言えるようです。

アートプロジェクトの変遷

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現代アートについての確認が終わったところで、アートプロジェクトの変遷についての話に移ります。

  • 1950年代〜70年代 美術館・ギャラリーの「外」≠「空間」
  • 1980年代〜90年代 「空間」→「場」→「公共」
  • 2000年代     社会システムへの関わり

「空間」から「場」へ、そして公共へ。少しずつアーティストのテーマは移ってきました。最初は、ただ美術館やギャラリーの外で活動することが目的だったのが、少しずつ、なぜ、その「場」を選ぶのかという「場所性」の追求にフェーズが移っていったそうです。

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その場所の歴史や暮らしてきた人々の記憶といった、目に見えないものに対して探求しようとするようになったのは1980年〜1990年代の間。学者の人々の間では、それまでは自分たちが生きている時代だけでの関係のみで、あまり場所についての考察は深まってなかったと言われているそうです。

スライドに載っている「ミュージアム・シティ・天神」では、アーティストが街に住みながら作品を作ったり、市民が参加しての作品づくりなどが行われたんだとか。

2000年代に入ってからの特徴は社会システムに関わり始めたこと。北川フラムさんが企画している「大地の芸術祭」は、地方自治体の主催となっています。実行委員会形式も多く開催されていますが、このメンバーに自治体が入ることも。

これは、公共政策のひとつとしてアートをどうするのかという動きが生まれてきていると言える、と林さん。これまで、ファンドレイズの方法は、文化庁の予算を獲得することだったのが、文脈の作り方が徐々に変わってきており、色々な部門から予算がつくようになったそうです。

いろいろな変遷を経て、アートプロジェクトは、アーティスト以外にも、ディレクター、プロデューサー、自治体、企業、NPO、大学、地域住民など、様々な担い手によって運営されるようになっています。

アートプロジェクトとまちづくり

「ぼくは最初、アートには興味がほとんどなかったんです。大学ではまちづくりに関わっていて、その活動の過程でアーティストと関わったことが興味を持つきっかけでした。」

まちづくりの定義について、林さんは「まちを良くするためのプロセスと行為、結果の蓄積」だと林さんは考えているといいます。「地域経済の活性化」「地域コミュニティの形成」「休眠不動産の活用など街の利用提案」「移住促進」などです。

「これらの視点からアートプロジェクトを見たときに効果は出ているのか。実際に、結構効果を生んでいます。フランスのナントという土地があります。造船業が盛んだったこの地域は、日本や韓国の工業が成長したタイミングで失業率が30%を越えたと言われています。そのときに、当時のまだ30代なかばだった市長が「文化しかない」と考え、余っているスペースを美術館にし、アーティストを呼び込みました。

アーティストが移り住んで街が格好良くなり、それに惹かれて若者や起業家が集まり、今ではバイオベンチャーも盛んなエリアであり、フランスで住みたい都市トップ3に入るところになっています。」

その地域が抱えている課題とどういうアートプロジェクトをやろうとするかの組み合わせによっては、色々なプロジェクトが考えられるのではと林さんは考えているそうです。アートプロジェクトをうまく活用しつつ、アーティストや市民が関わるプロセスを形成していくことができれば、まちにも良い影響を与えることができるのではないでしょうか。

最後に、林さんは良いプロジェクトを生み出すための条件として、「アートプロジェクト自体を楽しめるか」というものをあげていました。地域課題とアートプロジェクトをうまく組み合わせ、関わる人が楽しんで取り組むことができれば、楽しく地域社会の課題を解決していくこともできるかもしれませんね。

毎月開催している「マチノコトオープンゼミ」、次回はゲストに虎ノ門ヒルズの開業準備に携わり、開業後はエリアマネジメントを担当している黒田 哲二さんをお呼びして「虎ノ門未来予想図」というテーマでエリアマネジメントや街の未来像について考えます。興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

junyamori

inquire Inc. CEO、NPO法人マチノコト理事。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。『マチノコト』の編集を担当する他、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員長、ローカルメディアネットワーク『IDENTITY』を運営中。『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』など複数のメディア運営にも携わる。

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