2016.4.13
今年度からマチノコトは、「Neighbors Next U26 Project」のメディアパートナーになりました。マチノコトでも「Neighbors Next U26 Project」の活動の様子をお伝えしていきます。
26歳以下の世代がマンションにおいて人の無縁化を解決するソリューションを考えコミュ二ティをつくりだしていくことを目的に、昨年度スタートした「U26」プロジェクト。現在、「U26」では新年度の活動メンバーを募集しています。
新年度の立ち上がりに際して、プロジェクト運営を統括するHITOTOWAの荒昌史氏と、2015年度にオブザーバーとして参加してくださった建築家の仲俊治氏、猪熊純氏によるミーティングを兼ねた座談会が行われました。
昨年度を振り返った「前編」に続き、「後編」では2016年度のプロジェクトの概要と展望について話し合いが持たれました。
【前半】「自由さ」と「制約」の境を越えてーー若者が既存コミュニティのあり方を捉え直す「U26」プロジェクトの昨年を振り返る
荒:ここまで一年間やってきて、メンバーにとっての価値や彼らの成長、もしくは全体に関してどう感じられたか聞かせてください。
仲:はじめすごく頭でっかちに、「世のため人のため」「世代を代表して」と考えていたところから、最終的には自分の暮らしに等身大の興味関心から物語を紡ぎだせたというのは、提案としてよかったなと思います。一人称で語れるプロジェクトというのは訴求力がありますよね。頭でっかちだと百戦錬磨の先輩達には負けてしまいます。U26の使命というのは、みずみずしい感性が現状に対して違うオルタナティブを提案するというところだと思うので、彼らの今回の提案には非常に勇気づけられました。そこに私どもがちょっと客観的に補足しながら提案を繋げていった、そこが面白かったですね。
猪熊:1年がかりでやるというのも良かったと思います。たとえば大学の建築の課題って、1課題について1ヶ月半から2ヶ月かけてやるんですが、それくらいの期間だと現場の問題が自分ごとになる前に終わってしまう。社会問題を把握して、それに答えると共に、それが自分にとっても直感的に共感できるものにする、というのにはすごく時間がかかるので、通年かけてあそこまで自分の言葉だけで語れる状態になっていたのがよかったと思いました。
荒:それはある意味、素人だ、と割り切れたところもあったのかもしれませんね。建築の研究室でもデベロッパーでもないので。
猪熊:そうそう。素人なんだけど、ここだけは、と確信を持った部分はちゃんと言えるのがよかったですね。それぞれなりに納得感のある提案が出来ていました。それは彼らにとっての財産になっただろうなと思います。
荒:今回参加したメンバーたちを見ていていかがでしたか?みんなスキル的にも成長しましたよね。
猪熊:未来貯金を発表していた福岡達也くん。最初は「普通常識的にはこうで…」と先立ってあれこれ考えるタイプでしたけど、途中からはすごく問題に潜れて、全体をリードしていきましたよね。
仲:「住まいとは表現することである」と言ってくれた荒木萌さんもよかったですよね。共用部と専有部の壁を越える一言だったと思います。
荒:U26はメンバー構成が社会人と学生と、男女と地域もバラバラなんですよ。なるべく重ならないようにしていて、それもよかったのかなと。
猪熊:分野が違った人が集まったのがよかったですね。
荒:あとはここにテクノロジー系の人もいたら更に面白かったかもしれませんよね。今年は入っていただきたい。
仲:あとビジネスに強い方にも来てほしいですね。
荒:それでは2016年度の話を。今年度はカフェに取り組むことにしました。今回は、20年〜30年くらいたった大規模マンションの共用部を活用して、コミュニティカフェを実践したいなと。二つのパターンのコミュニティカフェを考えています。ひとつはイベント形式で、既に管理組合や自治会でやろうとされているものを支援する。もうひとつは常設形式で、週3程度でも良いので事業として運営できるもの。
猪熊:スキルの高い人たちが集まって、そこで利益を出したりできたら本当に面白いですね。そこを仕事にします、っていうくらいの。
仲:今年度の協力者ってそうそうたる方々ですね。
荒:前期はスクール形式のU-School、後期は提案・実践、と期間を区切りました。U-Schoolには仲さん、猪熊さんのほかに、ダンデライオン・チョコレートやブルーボトル・コーヒーを日本に持ってきたり、ひばりが丘でComma,Coffeeをプロデュースしていらっしゃる、株式会社WAT代表の石渡康嗣さん。小規模多機能ホームを手がける株式会社ぐるんとぴー代表の菅原健介さん。合同会社こどもみらい探求社の小笠原舞さんらをお呼びします。カフェのプロ、お年寄りのプロ、子育てのプロ、そしてまだ交渉中ですがまちづくりやマンションのプロの方々と、実際のマンション理事経験者にもお越しいただきます。
猪熊:おお〜すごい。
荒:後期は実際にマンションの現場に入ってやらせていただきます。イベント形式のほうはそこまでハードルは高くないと考えていますが、それでも多くのことを考えなければなりません。常設のほうは設備投資もかかってくるので、そこはまたハードルが上がります。少なくともプランニングや提案まではいきたいなと考えています。
猪熊:プロセスの設定が要りますね。
荒:居住者の方々との調整も起こってきますが、それもU26メンバーにとってはリアルで学びになると思います。どのような我々の振る舞いがイエスと言ってもらえることにつながるのか、とか、リアルですよね。
荒:お二人は「食堂付きアパート」や「りくカフェ」、「FabCafe」などをやられていて、住まいと飲食店との関係性について考えていることがあると思います。現在考えていることや将来的な展望を教えてください。
仲:地域における交流の場として可能性を感じる一方で、経営的に持続できることは重要な課題だなと思っています。善意だけでは続かないから。また、いい意味でそこに居座る住民が増えてくると、そこに一見さんが入りにくくなっていってコミュニティの閉鎖性を生んでしまうというジレンマもあるのかなと思っていて。これからの集合住宅と、少子高齢化におけるコミュニティカフェにおける大きな発展に際する課題だと感じています。そういうスキームも検討していきたいなと思っています。
猪熊:意外と空間の設計が大きく関わっていくのかなと思います。どれだけ開かれているかとか。お金の問題は食事・サービス・ブランディングといった空間以外の要素が大きいとおもうんですけど、誰でも来やす、という問題は見かけにかかっていると思うので。そこは設計的な要素の重要度が高いのかな、とは思いますね。
荒:設計はどんな人が集まるかに影響しますよね。
猪熊:りくカフェもはじめは仮設でやっていて、そのときは集まるのが決まった人だけだったんですよ。理由は二つあって、ひとつはコーヒーしか出していなかったということ、もうひとつは靴を脱ぐスタイルだったこと。仮設建築だったので木を敷いて作ったんですが、そうすると「せっかく無垢の木があるのに土足であがるのもったいないね」という声があって脱いでいたんです。そうすると人の家に上がる感覚があるんですよね。常設のほうはコンクリートのままにして土足で入れるようにしたら、それだけで入ってくる人がすごく増えました。そういうちょっとしたしつらえかたで、お金をかけなくても色々な人が入りやすい感じになって、「主」みたいな人が減る、もしくは「主」みたいな人がいても入れるようになるのかな、とい発見がありました。
荒;マンションの共用スペースって上足なんですよね。
猪熊:それは変えられるかもしれませんね。床をべりべりはがしてコンクリートにするだけでも変わるかもしれない。
仲:先ほどの発言の続きでもありますが、入りやすさと同じくらい、抜けやすさも大事だと思います。退出のしやすさって意外と考えていないですよね。誘うだけ誘っておいて、居心地が悪かったら抜けやすい、そういう逃げ道が感じられるというのは意外と大事。流動性っていう性質はとても大事だと思いますね。前に被災地の集会所みたいなところに行ったとき、たまたま「主」みたいな人がいて、そのお友だちが集まっているシーンがあって。いつもいる人たちとそうじゃない誰それ、って一目でわかってしまうようなことになっているのだとしたら、もったいないなと。
荒:よくコミュニティカフェっていうと真ん中に大きいテーブルをどーんと置きがちですよね。
仲:やってしまいがちなんですよね。食堂付きアパートのときはそれが頭にあったので、立ったり浅く腰掛けたりするところと、ちょっと落ち着いて座ってられるというところと、居場所の多様性みたいなものを意識しました。通り抜けていけるという流動性も念頭においてやりました。上に住んでいる人が、朝頼んでおいたパンを夕方受け取ってそのまま通り抜けて帰っていったりとか、ふらっと覗きにきて、まだ待ち合わせ相手が来ていないのを見て帰っていったりとか。ちらっと覗いてすぐいなくなるみたいのができると良いと思いました。
猪熊:簡単な設えで、居場所の多様性ってコントロールできますよね。DIYで壁にペンキ塗ろうとなったときに、白くせずに少し暗くするとか。
仲:いわゆる飲食店であれば、固定ファンをつくればやっていけることもあると思うんですよね。でも、マンションのなかのカフェだとすると特定メンバーで占められてしまっては益々息苦しいですよね。
猪熊:一見さんでも入って来れるような開放性のほうが大事になりますよね。
荒:そういう場であってほしいですよね。そういう意味では利用者のマインド醸成も大事かもしれませんよね。僕が仕事でコミュニティづくりをしているなかでは、リーダーを育成しがちなんですが、そういう人たちがどーんといると、「ただ新聞読みたいだけなんだけど」という人は入りにくいかもしれませんよね。
猪熊:あとは、用途のかけ算みたいなことが出来ると良いかもしれませんね。
仲:高校生が自習できる場所があるとか。
猪熊:そう。いろんなひとが来やすい空間を無理矢理作ってしまうんです。
荒:違う空間が連結していると良いですよね。中高生ってそういう地域のコミュニティからすっぽり抜けがちですもんね。
仲:単純化しすぎかもしれないけれど、例えば2週間を一区切りとして3ターン設けて、実験できたら面白いですね。土足で上がれる期間を1ターン、ほっこり系で靴を脱いでどうかをやってみる期間をその次に試して、自習できるコーナーをむりやり設けてみるのを試してみる、とか。それそれで人の入り方がどうかを観察する。ひとつひとつ目的を持って実験してみるわけ。
猪熊:色々試してみたいですね。
荒:今後のU26への期待をお聞かせください。
猪熊:やはり、提案を実現させることが最大の期待ですね。マンションで若い人が提案から考えて、っていうのははじめてだと思います。面白くなるんじゃないかな。
荒:マンションという、合意形成が難しく、規制の多い領域へのチャレンジですからね。
猪熊:若い人の敵意の無い立場が上手く作用してブレイクスルーしていったら良いですよね。
仲:野心を持って提案を実現していってもらいたいですね。きっとみなさん器用でしょうから、地域の住民のなかのアイドルとなってやっていくのはできるような気もするんです。でも、善意を超えた野心がないと続かないと思うんです。人の中心にいる、というのはどういうことか、探りながらの活動のなかで、野心を持って頑張っていただけたらと。
荒:たくさんのご意見をありがとうございました。どんなプロジェクトになっていくかとても楽しみです。今年度もよろしくお願いいたします!
(取材・執筆/木村びおら)
今期の説明はもちろん、2015年度からの継続メンバーによるリアルな体験談や、参加者での楽しいワークショップなど、盛りだくさんな内容です。ぜひお越しください!詳しくはこちらから!
第3回説明会
日時:4月20日(水)19時半~
場所:東銀座を予定
2016年度をより充実した1年にしませんか?
特にこのような方に向いていると思います。
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