2016.9.16
各地で移住に関するプログラムが行われています。そうしたなか、鳥取県はこれまでにも鳥取藝住祭などさまざまな取り組みを通じて地域の魅力を発信したり移住者を促す活動を展開したりしてきました。そこで、首都圏の20代〜40代の若い人を対象に、移住定住促進やネットワーク化を図る起業・地域づくりアカデミー『鳥取スタートラボ』を運営する小谷草志さんに、地域との向き合い方について寄稿いただきました。地元は兵庫ながら、大学から鳥取に行き、東京に引っ越したあとに鳥取に関わるようになった小谷さんならではの視点があるのではないでしょうか。
鳥取スタートラボ事務局代表の小谷と申します。
鳥取スタートラボ(略称「とりラボ」)とは「地域課題の解決」や「地域資源の魅力化」について同じ志をもった仲間と一緒に考え、継続的に実施できるプロジェクトを検討するプログラムです。約4か月間の長期プログラムでフィールドワークに行って実際に現場の声を聞きながら、地方でどのようなことが出来るのかをワークショップを通して考え、最終的に新たなプロジェクトを立ち上げることを目指します。「とりラボ」は2015年からはじまり、今年で2年目を迎えます。
そんなプログラムを企画・運営する者として、地域との新しい関わり方について大事なことを考えてみました。
「移住する、地域に関わる」ということは、転職とは一味違います。自分が今後、どんなライフスタイルを過ごし、どんなことに関わって生きていきたいかを真剣に考える必要があります。そして、その中で大事なのが【現地を知ること】と【考えるための時間をつくること】です。
移住や地域に関わることは、観光に行くのとは違います。だからこそ、そこに住んでいる人や土地をじっくりと知る必要があります。移住は現地に行き、地元の人と交流をし、その地域にどんな魅力や課題があるのかをちゃんと見て、知った上で考える必要のある大きな決断です。なので、それを考えるための時間をつくることが大事だと考えます。
今の仕事や住んでいる場所、関わっていることに自信を持って満足と答えられるでしょうか。もし、そうでないなら、様々な可能性を探ってみることが大事だと思います。
今はITの発達等により、本業で働きながら少しづつ地域に関わるパラレルキャリアや、いくつかの地域を移動しながら生活する二拠点、多拠点居住などの可能性も十分に考えられます。そうした可能性を踏まえながら、どう地域とか関わっていくか。その先に、自分自身の生き方や働き方をじっくり考えることが大切なのです。
東京都内では、最近では毎日のように各地方の移住フェアや説明会、イベントなどが開催されています。2015年には1万人以上の方がどこかの地域へ移住しました。
ただ、移住した人の中には地域に合わなかったり、色々な事情もあって元々住んでいた地域へ戻ってしまったりする人も一定数存在します。そんな中、イキイキと移住先での過ごし方を謳歌している人もいます。彼らの多くは、自分自身がやりたいと思っていたコトに関わったり、やりたいことを理由に地域に移住したりした方々なのです。
これからは、単に住む場所を移す移住ではなく、自分のやりたいコトや興味のあるコトに関わるために、移住や二拠点居住をすることが普通になるかもしれません。
筆者自身も、現在は鳥取と東京の二拠点居住です。1ヶ月のうち10日から2週間程度は鳥取で過ごしながら、空き家の利活用を通じて「人が地域でアクションすること」を支援する事業を行っています。
二拠点居住は、移動という大変さもありますが、東京での人脈や情報が鳥取の事業に還元されることや、逆に鳥取での人脈や情報が東京での事業に還元されることもあり、それぞれの相乗効果を感じています。
とりラボで移住された方の中にも、これまで培ったウェブマーケティングやITスキルを生かしながら、鳥取県内の観光を盛り上げるべく地域おこし協力隊として頑張っている方もいます。こうした、自身の持っているスキルを生かすことで、地域でやりたいことを実現する道が開かれることもあります。だからこそ、自分自身と向き合いながら、地域で何ができるかを考えることが移住の一つの要素になってくると思います。
一方で、受け入れる地域側にとって大事なことは、地域外にいる人とどう協力していくか、共創していくかです。
日本全体で人口減少している時代に、すべての地域で人口が急増することはありません。だからこそ、その地域に住む人たちだけでなく、地域外の人と一緒にプロジェクトを行ったり、協力・共創しながら地域を盛り上げていく関係人口をいかに増やしていくかが重要です。
とりラボ自体も、そういったコンセプトのもと地域内外さまざまな方と協力しながら進めています。昨年プログラムに参加した地域の一つである鳥取県鹿野町では「週末だけのまちのみせ」と銘打って、毎年地域外の人も巻き込んで町全体を活かしたイベントを開催されています。
これは町の空き家や空きスペースを貸し出して、短期間カフェや催しもの、手作りの販売店などを出店してもらうもの。そうした取り組みの中から、継続的に町に関わる人が現れたり、地域内に住む人も楽しみが増えたりするという循環を生み出しています。
いきなり移住することにのハードルが高くても、まずはその地域と関わることから一歩は始まります。地域の人も、地域に関わろうとしている人を受け入れながら、いかにして多様な人たちと一緒になって地域を盛り上げていくかを意識すると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?皆さんが地域活性やまちづくり・地方創生に関わる時にはぜひ意識してみてください。
そして、今年もとりラボではこのような体験ができるプログラムをつくっていきます。
少しだけご紹介させていただくと、今回のとりラボは昨年よりもさらにパワーアップして、地元で活動する地域団体と一緒にプロジェクトを考えます。
例えば、鳥取県伯耆町では『地元こだわりの「器×酒」を世界へ届ける』というテーマのもと、地元で醸造されたどぶろくと伝統工芸である大山焼きを、もっとたくさんの人に届けることを目指すプロジェクトです。その他にも、魅力的で面白いプロジェクトを用意していますので、少しでも興味を持っていただいた方はぜひ鳥取スタートラボのホームページをご覧ください。
寄稿者プロフィール
小谷草志。1988年生まれ。兵庫県出身。鳥取スタートラボ事務局代表・一般社団法人ワノクニ理事。鳥取大学農学部を卒業後、都内でスタートアップ立ち上げや企業勤務を経て、2015年に独立。現在は鳥取県と東京の二拠点居住をしながら働き方を含めたライフスタイル変革を目指してプログラム設計やワークショップ企画・イベント運営等を手がけている。
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