マチノコト

2015.4.3

朝市から生まれる市民のつながりーー小金井市の「はけのおいしい朝市」に学ぶ地域の魅力の見つけ方

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決まった日の早朝に地域のある場所に集まり、人々が持ち寄った野菜や手づくり品などを販売する市(いち)のことを「朝市」といいます。

全国の様々な地域で開催されていて、中には平安時代や江戸時代から続いている歴史のある朝市もあるそう。

朝市は主催が農協や地方自治体のところもあれば、商店街の店舗が集まり共同で開催していたり、かたちは様々です。

朝市は単に買い物をするだけの場ではなく、定期的に市民が集まることで交流が生まれたり、その地域の魅力を発信する機会にもなっています。

東京都の小金井市にも、毎月一回の開催を楽しみにたくさんの人が訪れる、市民が自分たちでつくり上げた「はけのおいしい朝市」があります。

「はけのおいしい朝市」とは

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小金井市で毎月一回開催されている「はけのおいしい朝市」は、こだわりを持ってつくられた雑貨や食べ物を通じて、「はけという自然豊かな場所でつながること」をコンセプトにした朝市です。

小金井市周辺に暮らし商売をしている出店者が中心となっており、焼き菓子や珈琲、手づくりの紙雑貨や革製品などが販売されています。2009年にスタートし今年で6年目を迎える「はけのおいしい朝市」は、毎回幅広い世代のお客さんに溢れ、小金井市民に愛される朝市になりました。

豊かな自然と美しい湧き水に恵まれた「はけ」

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「はけのおいしい朝市」が開催されている小金井市は、東京都心から電車で30分の多摩地域にあります。

小金井市の中を東西に走るJR中央線の南側には、高さ約15メートルの「がけ」があります。このがけを昔から小金井の人々は「はけ」と呼んできました。

南側には「はけ」には清らかな湧水をあつめて流れる野川があり、はけの緑豊かな自然に溢れています。

春には玉川上水沿いに小金井桜と呼ばれるヤマザクラの並木が満開となり、お花見を楽しむ人々で賑わいます。

「はけのおいしい朝市」が生まれた理由

「はけのおいしい朝市」の創設者のひとり、小金井で家族と暮らしながら犬のペットグッズを販売するショップ「dogdeco」を経営している池田功さんに話を伺いました。

池田さんは現在、最近東小金井の高架下にオープンした共同店舗「atelier tempo」で、お店を開いています。

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池田さんは小金井市で商売をする一方で、自分が地域に貢献できることはなんだろうと考えていたといいます。

ある時、武蔵野公園の近くでおむすび屋さんをしている友人の伊藤彩さんが「はけの朝の空気がすごくいいんです、毎朝散歩帰りに立ち寄ってくださるお客さんも多いし」という話をされたそう。

伊藤さんも自然の心地よさが残る小金井市の「はけ」の土地に魅了され、この地を知ってもらいたい、訪れてもらいたいという想いを持っていました。

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その言葉を聞いて、「はけの朝の爽やかな空気の中で公園を散歩し、地域のお店で食べ物や飲み物を買ってうちへ帰り、素敵な1日がはじまる」という光景が目に浮かんだという池田さん。

「そんな光景を実現するために、地域の方たちが月一回楽しめる催しをしよう」と珈琲屋台「出茶屋」の鶴巻麻由子さんとともに小金井で暮らし商売をしている仲間に呼びかけ、「はけのおいしい朝市」を開催し始めました。

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初回からたくさんのお客さんが集まり、回を重ねていくにつれて、一緒に運営をする仲間もお客さんもどんどん増えていきました。そして、今では「はけのおいしい朝市」は小金井市民が毎月楽しみにしているおなじみの催しとなっています。

地域の暮らしをより豊かにしていくために

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小金井市の様々な場所で、5年間毎月開催されてきた「はけのおいしい朝市」。

こだわりをもって作られた商品を販売する出店者とお客さんとのあいだには、自然に会話が生まれます。この地域で商売をしている人たちをよく知ることは、地域での暮らしをより豊かにしていきます。

一昨年秋には開催50回を記念して「小金井神社」で開催。音楽ライブや子供たちが楽しめるワークショップも行われました。

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江戸時代に建てられた建造物が多数保存されている「江戸たてもの園」とのコラボレーションして開催したときには、あいにくの大雨にもかかわらず、たくさんの人が来場したそうです。

小金井市外からの来場者も多い「はけのおいしい朝市」を小金井のいろいろな場所で開催することは、小金井市の魅力に気づいてもらうことにもつながっています。

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また、「自分の住んでいる地域に貢献したい」という地域の人々が当日のボランティアスタッフとして運営に関わることで、住民同士のつながりが生まれているそうです。

はけの森に咲くしだれ桜

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4月11日〜19日には「はけのおいしい朝市」の枠を超え、観光協会や商工会、商店会と協働する「はけの森をめぐる旅」が開催されます。

この期間中は駅と野川を結ぶルートの各所で、スタンプラリーや観光案内ツアー、キッズ向けワークショップなど連携イベントが多数行われます。

「はけのおいしい朝市」は、今回この「はけの森をめぐる旅」の連動イベントとして4月12日と19日に武蔵野公園で開催します。野川と武蔵野公園でこの時期に咲くしだれ桜を眺めながら、朝市を楽しむことができます。

連動イベントとこれに賛同している参加店の地図が掲載された「はけ旅マップ」もつくられました。

これまで独自に開催していたはけのおいしい朝市が地域の皆さんとともに新たなイベント“はけの森をめぐる旅”を作り上げていけることに喜びを感じます。小金井の街・自然に触れていただき、美味しいものを食べたりお買い物をしながら、ゆったり小金井の街を旅してほしいです。

市民と行政、商工会など様々なセクターが協働してつくり上げるこの取り組みは、地域の人々のつながりがさらに深まるだけでなく、地域の魅力を再発見することにもつながりそうです。

地域にこのような市民がつくり上げる場が生まれ継続されてていくことは、その地域での暮らしをより豊かにしていくと思います。

気になる方はぜひ桜が咲く春の小金井を訪れて、街なみとはけの豊かな自然、そしてはけのおいしい朝市を楽しんでみてはいかがでしょうか。

はけのおいしい朝市の概要

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■はけのおいしい朝市 vol.68 in 武蔵野公園
共催:西武・武蔵野パートナーズ、はけのおいしい朝市組合
開催場所:武蔵野公園くじら山付近
開催日時:4月12日(日)、19日(日)両日ともに10:30-16:00

詳細はこちらです

■「はけの森をめぐる旅」
〜野川のしだれ桜とお店をめぐる、ぼくらの街の小さな旅〜
開催場所:小金井市南側
開催日時:4月11日(土) ~ 4月19日(日)散策可能な時間帯:朝~日没まで 

詳細はこちらです

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工藤瑞穂。 「soar」プロジェクト代表・編集長、「HaTiDORi」代表、ダンサー、元日本赤十字社職員。1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。NPO法人ミラツク研究員、Webメディア「マチノコト」ライター。

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