マチノコト

2015.7.1

市民から反響を呼んだ都市の公園に図書館をつくる社会実験「Urban Picnic」を振り返る

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以前マチノコトでは、兵庫県神戸市で公園を市民の交流の拠点とする社会実験プロジェクト「Urban Picnic」を紹介しました。

記事を掲載したところ「都市の公園に図書館をつくる」というアイデアのユニークさもあって、このプロジェクトにはかなりの反響がありました。

日常的に市民が利用をしていなかった神戸の中心地にある公園を、もっと親しみやすく魅力的な場所にしようと、市民で結成された実行委員会と神戸市役所の共同で開催。

6月上旬に行われ、たくさんの人が訪れ、大変盛況だったというこのイベントの模様を振り返ってみたいと思います。

幅広い人々が訪れた「Urban Picnic」

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都市と自然を同時に楽しむ神戸発のライフスタイルを示す「Urban Picnic」の軸となる企画は、公園の中に図書館をつくるアウトドアライブラリーの運営です。

カウンターの面材には六甲山の間伐材、テーブルは電気店で使っていた電気コードドラム、本棚や椅子は廃校になった市内の小学校で使われていたもの、飾りの旗は着古したTシャツなど、会場は素材をリユースして手づくりで設置。

屋外の空間をまるで家のリビングルームのように活用する「アウトドアリビング」をテーマに、芝生の広場にはパンやコーヒーを提供するカフェスペースも設置され、開放感のある中にも家でくつろいでいるような心地よい空間が生まれました。

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会期中には30代から50代まで中心に幅広い世代の人が集まり、2週間で約5000人が訪れたそうです。

今まで通り過ぎるだけだった公園でゆっくり滞在して過ごす方が増え、特に週末の午後には、3〜4時間かけてアウトドアライブラリーを満喫する方も。

青空の下で思い思いの時間を楽しむ、新しい公園と市民の関わり方を提案する催しとなりました。

36組の本棚オーナーと市民が本を介した交流会を開催

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今回のアウトドアライブラリーは、公募で集まった36組の本棚オーナーが、それぞれのテーマを設定して本を並べ、市民からのテーマに沿った本の寄贈とメッセージも受け付けました。

なんと本棚オーナーは、8歳から77歳までという幅広い年齢層。本棚オーナー同士がお互いを知り合う交流会を開催するほか、本棚オーナーと本の寄贈者との交流会もそれぞれのオーナーが開催しました。

本をお互いに紹介しあうという基本的なフォーマットを飛び越えて、寄贈者同士の交流時間を設けたり、本を紹介するための独自の手法を持ち込んだり。

本棚オーナーが主体的にこのアウトドアライブラリーに取り組むことで、ただ本を読めるというだけでなく、本を介した市民の交流が生まれたそうです。

ファーマーズマーケットとナイトピクニック

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実験期間中の6月13、14日の2日間は、ファーマーズマーケットも開催されました。神戸市内で生産されている季節の食材を紹介し、生産者と市民が交流する機会を生み出し、地域コミュニティで農家を支えていこうという取り組みです。

当日は色とりどりの野菜が並び、神戸で農業を営む生産者と市民が会話を楽しみながら野菜を購入する姿が見られました。

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最終日前日には、「ナイトピクニック」と称して、夜の交流会も開催。持ち寄りの食材を楽しみながら、都会の公園に突如あらわれたカフェと芝生を楽しむ人々の姿が溢れました。

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主催側がコンテンツを一方的に提供するのではなく、本や食材など市民が自分たちで持ち寄ったものを「シェアする」という感覚が生まれていることが、より一層参加者同士の交流を深めたのではないでしょうか。

「日常的に開催してほしい」というたくさんの参加者からの声

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参加者からは、「また開催してほしい」「芝生やカフェをこのまま残しておいてほしい」といった声がとても目立ち、付近の住民からも単なるビッグイベントではなく、公園をよりよくする取り組みということで好感をもって受け入れていただいたのだそう。

「神戸パークマネジメント社会実験実行委員会」の事務局長・村上豪英さんはこう語ります。

社会実験としては成功だったと思います。公園をよりよくするために、芝生とカフェが必要なこと。そして、愛着とコミュニケーションをはぐくむために本が大切な役割を果たすこと。さらに、多くの人にご協力いただくことで、場作りがプラスに進むこと。いろいろ学びました。

今は都市型のアウトドアイベントはどんどん増えていますし、山や海に行かなくても自然があり開放的な屋外空間を利用して、幅広い世代が交流できる場をつくるのはとてもいいアイデア。

さらに、誰でも親しみがある「本」がコミュニケーションツールとしてその場にあることで、より活発な交流が生まれたのだと思います。

公園以外にも、まちにはあまり使用されていない公民館や広場などのパブリックスペースがたくさんあります。地域のコミュニティを形成するために、これらの眠っている資源はもっと活かされるべきではないでしょうか。

市民と協力しながらパブリックスペースを活用

そして市民のアイデアを活かし、市民が協力しながらチャレンジするチャンスをつくることは、行政としても必要なことではないかと思います。

失敗を恐れるのではなく、市民と行政が一体になって「まずやってみましょう」という姿勢で、社会実験としてあれこれ試しながらつくりあげていく。「Urban Picnic」はそんな新しい市民と行政の協働のかたちだと思います。

社会実験をただ繰り返すのではなく、公園全体を普段からこういうゆったりと過ごせる状態に恒久的に変化させ、その力で神戸の都心部全体の価値を上げていくことが大切だと思いますし、神戸市役所の方々と協議して、その方向に進みたいと思っています。

今回行われた社会実験はさらにブラッシュアップされて、神戸の都心部を今までよりいっそう素敵なエリアに変えていくことでしょう。これからの動向がとても楽しみなプロジェクトです。

関心がある方は、ぜひこちらのプロジェクトページをチェックしてみてくださいね。

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工藤瑞穂。 「soar」プロジェクト代表・編集長、「HaTiDORi」代表、ダンサー、元日本赤十字社職員。1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。NPO法人ミラツク研究員、Webメディア「マチノコト」ライター。

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