マチノコト

2016.3.3

一歩踏み出すためにーー被災地で3月11日に風船を飛ばす『HOPE FOR PROJECT』代表高山智行さんの思い

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もうすぐ東日本大震災から、5年が経ちます。
震災当時、宮城県仙台市に住んでいた私は、今でも震災当日の夜のことを鮮明に覚えています。

家に帰れず職場に泊まることになった私は、インターネット上である情報を目にします。

「震災直後に仙台市荒浜に津波が押し寄せ、亡くなった人もたくさんいる」

仙台市に住みながらも荒浜という地名を知らなかった私にとって、荒浜はその日から悲しい出来事があった土地になっていました。

その荒浜の海岸で、『HOPE FOR PROJECT』というプロジェクトが行われていると知ったのは、2013年のこと。2012年から毎年3月11日に、花の種を入れた色とりどりの風船を飛ばしています。

たくさんの人々が追悼の気持ちをこめて続けてきたこのプロジェクトは、今年の3月11日にも開催されます。

花の種の入った風船を空へ

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仙台市中心部から6㎞に位置する若林区の海沿いにある荒浜は、津波によって多くの住宅が流され、数多くの方が命を落とした地域。いまだに土地の活用方法が決まっておらず、草木が生い茂り、夜になると灯りひとつない真っ暗な状態となっています。

『HOPE FOR PROJECT』は、亡くなった方々への哀悼の意と、散り散りになってしまった荒浜の方々が、年に一回でも郷里に集い、 少しでも思いを共有出来る時間を作れないかという思いで始まったもの。

毎年3月11日に、荒浜の海岸に慰霊祭に参列した方々と花の種を入れた風船を被災地の空へ飛ばす企画を行っています。使用されているのは、環境に配慮し、太陽光で自然分解され、落下したら土に還るエコバルーン。

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当日は子どもから大人まで毎年400人近くの方が集まり、震災が起きた14時46分に黙祷を捧げたあと、「HOPE FOR」というメッセージが刻まれた風船をリリースします。

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2014年からは、海岸にほど近い場所にあり、津波の被害により廃校となった荒浜小学校で、荒浜に縁のあるアーティストによるライブも行っています。

避難所にいても自分にできることを

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HOPE FOR PROJECTを中心となって行っているのは、荒浜のすぐ側の地区で生まれ育った高山智行さんです。

荒浜は海のある小さな町ですが、もともと仙台市唯一の海水浴場があり、年間4万人が足を運ぶ場所でした。地元の人々が駐車場や海の家を運営したり、個人で経営する小さなお店があったり。魚を取って農家さんの野菜と交換するなど、おすそわけの文化も根付いた、小さいながらも住民同士が支え合っている地域だったそうです。

震災が起こったときは、仕事から家に戻って母と祖父の無事を確認したんですが、まさか津波がくるとは思っていなかったので、ガソリンを買いに海の方へ向かいました。そしたら、海沿いの田んぼを津波が走ってきたので、急いでUターンして家に戻り、祖父と母親を連れて津波に追いかけられながら逃げました。多分、その地区で最後に逃げたのが僕だったと思います。

家も津波の被害を受けたため、避難所で過ごしていた高山さんは、自分に何かできることはないか探したといいます。避難所にいると、誰が無事だったか確認することはできるけれど、もしご家族や友人が県外に住んでいた場合、安否情報を得られず不安なのではないかと考えた高山さん。ひとまずtwitterで、「◯◯避難所にいます。ここにいそうな人であれば探します」とつぶやいたそう。一晩明けて次の日の朝起きてみると、ものすごい数の「◯◯を探してください」というリプライが届いていました。なんとなくつぶやいたことだったけれど、そのリプライを見て「書いた以上やろう」と覚悟を決めて探し始めたそうです。

最初は若者が何してるんだという感じで相手にされなかったけど、コツコツ続けていたら認めて協力してくれる人が増えてきたんです。最初は無事でしたといういい報告ができていたけれど、二週間経つとそれもできなくなってきて。遺体安置所に行って自分の目で確かめたりもしていましたが、ツイッターの140文字でそれを伝えていいのかは相当悩みました。

高山さんは避難所が解散してからは、荒浜のために何かしたいとは思っていたもののできることはあまりない状態だったので、同級生と協力して、道端に落ちている写真を洗浄して行政に届ける活動を続けていました。

みんなが思いをはせる場所を

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2011年のクリスマス前に、お子さんを亡くした同級生が「あの子、緑色のものが好きだったんだよね。」と話してくれたことをきっかけに、震災から1年目の3月11日に緑色の風船を飛ばすことを思いついた高山さん。緑色のみで売っている風船がなかなか見つからなかったため、せっかくなら色とりどりの風船に花の種を入れて飛ばそうということになったのだそうです。

同級生だけで200個だけ飛ばそうと思っていたんですが、2012年3月11日には、荒浜に慰霊のため1700人が足を運んでいたんです。風船在庫が700個あったので膨らませて、海辺でお祈りして慰霊しているひとたちに声をかけたら、「飛ばして帰ろう」と言ってくれました。

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色とりどりの風船を空にリリースをしたときには、風船に向かって手をあわせる人がいたり、「◯◯ちゃんにバイバイ言おうね」と声を掛け合っている親子もいました。

たかが風船が飛んだだけだけど、無機質で周りも色がない海岸に、綺麗な色が映えたのを見ていろんなことがフラッシュバックしました。みんなで涙を流しながら、思いをはせる場所もなければそんな時間もなかったんだなって気づきました。その時はまだ荒浜に足を運べないひともいたかもしれないけど、もしこれを毎年続けていったら、みんなが足を運ぶきっかけになるんじゃないかなと思ったんです。

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当日は、震災直後に高山さんがtwitterを通して安否報告をした人も荒浜に来てくれて、「あれがなかったら、何も私たちは知ることはできなかった。ありがとうございます。」と伝えてくれたのだそう。様々な人からの感謝や応援の声、仲間たちの協力を受けて、高山さんは毎年風船リリースを続けています。

荒浜という場所をもう一度前向きなイメージに

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高山さんが3月11日にプロジェクトを行いつづけるのには、荒浜という土地とそこにいる人々のことを知ってほしいという思いがあるのだそう。

3月11日の夜中に「荒浜に遺体があげられた」というニュースが出回ったので、それが全国に荒浜の名前が知られた最初で最後だと僕は思うんです。そのイメージを、僕はやっぱり変えたいなと思いました。荒浜っていうまちは、昔は海水浴場があったり小さいながらも営みがあって、なおかつ震災後に漁業をやってた80歳になる漁師も、荒浜で再建してまた漁師を始めたんです。家が流された跡地でスケートパークを始めた若者もいますし、本当に一割にも満たないかもしれないけど、動いてるということを少しでも知ってほしいんです。

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震災から時間が経ち、もう被災地は復興していると思っているひとも多いとは思いますが、荒浜は家を建てることもできず、土地の活用方法も決まっていない状態です。

正直「復興」っていうことがこの5年間答えが出なかったんです。いったい何が復興なんだろうって。
クリスマスシーズンで仙台駅前はキラキラしていても、たった15分くらい離れた荒浜は未だに灯りのない荒浜にいて。でもひとつだけこれが復興なんじゃないかと思ったのは、荒浜という場所をネガティブでなく前向きなイメージで捉えてもらえるだけでもいいのかなということです。

特に地元の人に関しては、一歩踏み出すことが復興なんじゃないかな。それは普通に生活することでもいい。そこで生活する人たちの心に灯りがともらないと、復興じゃないと思うんです。そこからまちづくりでもなんでも始まっていくんじゃないかと思っています。

情報を目にしてもらえることだけでも復興につながる

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最後に、高山さんが被災地以外の場所に住んでいるひとたちに伝えたいことを伺いました。

現地に来るのが難しくても、ちょっとでも情報に目を通してもらえるだけでも嬉しいです。実際荒浜にも来たことなくて、毎年3.11近くになると必ずメッセージをくれる人たちもいる。それだけでなく大きな金額を募金してくれる人もいますが、そういうのってなかなかできないと思います。うわべだけで思ってるってわけじゃない。もちろん現地に来てくれたりするのも大事だけど、自分たちが発した言葉を受け止めてもらえるだけでも、復興につながるんじゃないかなと思ってます。

現地に足を運べないとしても、この記事を読んでくださり、荒浜やHOPE FOR PROJECTについて知ってくださったことに、私も心から感謝したいと思います。

今年も3月11日には、海岸での風船リリース、そして音楽ライブが行われます。みなさんそれぞれのかたちで、ぜひこのHOPE FOR PROJECTと荒浜を応援してくださると嬉しいです。

HOPE FOR project 2016
■日時:2016年3月11日(金)
■場所:仙台市立荒浜小学校 
■内容:
15:15〜風船リリース(校庭)
16:00〜音楽(荒浜小学校教室内)
参加アーティスト:HUNGER(GAGLE)、會田茂一、恒岡章、KGM、佐藤那美

HOPE FOR PROJECTでは開催にあたって、寄付金を募っております。
詳細はこちらをご覧ください。

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工藤瑞穂。 「soar」プロジェクト代表・編集長、「HaTiDORi」代表、ダンサー、元日本赤十字社職員。1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。NPO法人ミラツク研究員、Webメディア「マチノコト」ライター。

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