マチノコト

2015.11.25

「糸」が結ぶまちとひとーー2軒の空き家を改修して生まれた文化交流スペースitonowaが京都・島原に再び活気を!

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もし、あなたの隣のおうちが、何年も空き家になっていたらどう思いますか?

近年、増え続ける空き家。総務省の調べによると、その軒数は、2013年時点で過去最高となる820万軒にのぼると言われています。空き家を活用して地域活性化に繋げられたら良いのにな、そんな想いを抱かれる方は多いのではないでしょうか。

今回ご紹介したいのは、まさにその想いを実現している「糸でつながる33mのマーケットitonowa(イトノワ)」です。お話を聞かせていただいたのは代表の村田 敬太郎(むらた けいたろう)さん。高齢化が進行して空き家が増す地域に、かつての活気を取り戻そうと新たな文化交流の場を生み出し、だんだんと賑わいを呼び戻しています。

今回は、itonowaに携わるひとたちが実体験を持って示している、コンセプトづくり・資金調達・地域との関わり方、この3点に関する大切にしたいポイントをお伝えできればと思います。

2村田 敬太郎(むらた けいたろう)さん

はじめに、33mのマーケットitonowaとは?

京都市内にある島原という地域で2015年10月にオープンした、文化交流スペースitonowa。背中合わせの2軒の空き家を改修して、一室ずつ「糸」をコンセプトにしたショップを迎えた、奥行き33mのマーケットです。

2つの縁側が向き合う広々とした中庭には、多肉植物がずらりと並んで緑を添えています。玄関口にはコーヒースタンドがあり、誰もがふらりと立ち寄って小上がりのスペースに腰をかけてゆったりと過ごすごとができます。

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現在ショップは5部屋に入っており、アンティーク着物などを扱った古道具・アートデコレーションのショップ、子供着物、古布を活かした骨董ギャラリー、糸を使ったアート雑貨、ヴィンテージウエディングドレスなど、どれも「糸」に関わる個性豊かな顔ぶれです。

1つ目「地域の歴史を現在につなぐ」

なぜ「糸」というテーマに統一したのでしょうか?その理由は江戸時代にまで遡ります。

itonowaがある島原は、江戸時代より花街(かがい)と呼ばれ、遊宴で賑わい新撰組や勤王の志士などにも愛された、歴史的な文化交流のある地域でした。その一角に、繊維関係のお店がずらりと建ち並んでいた通りがありました。

その通りに位置する一軒の呉服屋を、村田さんのご家族が営んでいます。村田さんは広告会社で経験を積み、5年前に京都に戻ってきました。その当時から、呉服屋の隣は空き家となっていました。高齢化が進み、空き家が増えるこの島原に、かつての活気を取り戻したい!そんな想いで、隣の物件を活用して何か良いアプローチができればと考えはじめたそうです。

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もともと、この物件は古くから毎年夏に「地蔵盆」の会場として、町の人々へ場所を開いていたという歴史がありました。地蔵盆とは近畿地方を中心に広まっていた習わし。毎年夏に、そこに住む人々の手によって各地域に祀られる地蔵の像を洗い清め、赤や白の提灯を飾ったり、供養のお菓子や手料理などを皆で振る舞い合ったりという昔ならではの行事です。

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地域が持つ「文化交流」という歴史を復活させ、通りが持つ「繊維」という糸の記憶を紡ぎ、建物が持つ「地域の人たちが集う場所」という役割を受け継ぐ。itonowaの在り方は、それら過去の延長線上に築かれている今であり未来となっています。

空き家を活用して何かをはじめたいという時に「でも何をしよう?」「コンセプトはどうする?」と迷うことがあるかもしれません。しかし、その地域や通りや物件が持つ歴史を辿ると、おのずと歩む先は見つかるのかもしれません。

2つ目「チームを組んで助成金を活用」

itonowa誕生に携わった主なメンバーは、代表村田さん、京町家の再生をメインとする建築設計・施行の日暮手傳舎(ひぐらしてったいしゃ)さん、アートディレクター兼スタンドコーヒー担当の西山 拓磨(にしやま たくま)さんです。

村田さんが、建築士の吉田 玲奈(よしだ れな)さんに、隣の物件の活用方法を相談したことがきっかけとなり、駒が進みはじめました。ですが、ともに企画を考えていくなかで想い描くイメージは膨らむものの、資金調達をどうするかという壁にあたりました。

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そのタイミングで、ちょうど京都市による空き家活用促進の助成金として、2014年度「空き家活用×まちづくり」モデル・プロジェクトの公募が開始されていたのです。京都市の過去類似の助成金と比較しても金額の大きなもので、京都市としても非常に力の入った公募でした。もちろん、それと比例して、厳しい判断基準と高い競争率が予想されるため、採択されるのは至難の業。

さらに驚くべきことに、その公募を知ったのは、なんと締め切りの1ヶ月前。助成金の存在を知った村田さんは、急ピッチで頭の中のイメージを企画書へと落とし込んでいきました。それと同時に、チームで動いた方が互いの強みを持ち寄れるためきっと面白いことができるはずと、アートディレクター・不動産・税務など各専門分野の仲間を集め、多才なメンバーを巻き込んでいきました。そして、約120名の来場者による投票参加型の公開プレゼン審査を経て、見事itonowaの採択が決まりました。

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助成金は、管轄や趣旨によって内容や対象は異なりますが、全国的に年間約3000種もの助成金が公募されているといわれています。資金調達に苦戦することがもしあれば、公募中の助成金について一度調べてみてはいかがでしょうか。

また、その際に強力なメンバーを募って知恵を持ち寄ることは、企画の進行を加速させる有効な一つの手段かもしれません。ただし、助成金はあくまで“追い風”。採択されなくても実現するという想いを胸にした前提で活用を検討するのがいいでしょう。

3つ目「地域のひとたちへの丁寧な対面」

こうして実現へと進んだitonowaは、無事今年の10月にオープンを迎えることが決まりました。そこで、地域の皆が集える場所になるために、自分たちの取り組みを知ってもらおうと、周辺世帯へオープニングイベント開催のお知らせを兼ねて、一軒ずつ挨拶に伺うことにしました。

各運営メンバーと繋がりのある大学生たちの協力を受けつつ、なんと600世帯へ直接挨拶まわりを実施したそうです。一軒一軒、顔を合わせて丁寧に挨拶ができたおかげで、今では近所の子どもから手押し車を引いたおばあちゃんまでが訪れる場所となっています。

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まちの皆が集える場所を!そんな想いではじめる取り組みでも、予想以上の慌ただしい日々などから周囲の人たちへの挨拶が後手になったり疎かになったりしてしまうケースは少なくないのではないでしょうか。暮らす土地をともにして、一緒に根を張っていくからこそ、丁寧に生きた関係性をつくりあげていく必要があるのだと、itonowaに携わる人々の姿から改めて実感させられました。

空き家活用から生まれる素敵な地域の未来。その実現に向け、何をする?資金はどうする?どうやって地域のひとたちを巻き込む?様々なポイントで立ち止まることがあるかもしれません。そんな時はぜひ京都 島原にあるitonowaのことを思い出して、はじめられることから取り入れてみてはいかがでしょうか。

前田有佳利

だり / 前田 有佳利

ゲストハウス紹介サイトFootPrints(フットプリンツ)編集長。起点分析家のフリーライター兼イベントデザイナー。まちづくり秘書として柔軟に各プロジェクトに関わります。文字と場を介してひととひとを繋ぐことが好き。greenz.jp、京都物語商店、リリリリノベーションなどで執筆。最高の仲間×旨い飯×心地よい音楽を愛でる。 1986年生まれの和歌山出身、京都・大阪・東京を経てUターン移住中。 http://footprints-note.com/

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