2016.7.14
日常的に同じ地域に暮らす人々とつながり、互いに助け合っていくにはどうしたらいいのか。
ご近所とのほどよいつながりは、私たちの暮らしを豊かにし、そして様々な社会課題の解決へとつながっていきます。これは、マチノコトが立ち上げ当初から取り組んできたテーマでもあります。
以前、マチノコトオープンダイアローグの第4回にゲストとして登壇していただいた、株式会社Proper代表取締役CEO の六人部生馬さんが開発するご近所SNS「マチマチ」も、ご近所とほどよいつながりを生み出そうというサービス。
『マチマチ』は、ご近所の方と近隣のお店、イベント、防犯・防災などの情報交換を行うためのSNS。サービスのコンセプトは「ご近所さんと話そう。」です。SNSというと、Facebookやmixi、Twitterといったサービスを思い浮かべるかもしれませんが、「マチマチ」はちょっと他のSNSとは異なります。
まず、「マチマチ」を利用するには本人確認が必要になります。その地域に住んでいる人であることを確認した上で利用することを重視しています。趣味や目的でつながるSNSとはまた異なるご近所SNSは、日本だけではなく海外でも登場しており、注目を集めています。
米国では「Nextdoor」、イギリスでは「streetlife」、オーストリアでは「FragNebenan」、中国では「考拉先生」など、ご近所SNSは各地で登場してきています。
「Nextdoor」は、2015年に1億1000万ドルもの金額を資金調達し、評価額が11億1000万ドルとなったベンチャー企業です。投稿される内容は、ガレージセールのお知らせ、ペットの捜索願い、空き巣が入った情報など。
大規模なメディアにおけるローカルニュースでは細かな情報まで行き届かないですし、リアルな場での井戸端会議が開催されることもなくなりました。ネットにつながる時間は増加しているため、「Nextdoor」のようなご近所SNSが役に立つ場面も増えてきているのでしょう。
これまでも、地域SNSと呼ばれるサービスは日本でも登場していました。こうしたサービスがなかなか浸透しなかったことから、ご近所SNSに対しても厳しい見方をしている方もいます。個人的には、ご近所SNSは今だからこそ注目するべきだと考えています。それは、「スマートフォン」と「ソーシャルメディア」が浸透したからです。
PCを所有する人の数は限られていましたが、スマートフォンの浸透によって個人個人の手に端末が行き渡り、いつでもどこでもインターネットにアクセスしやすくなりました。かつ、様々なソーシャルメディアが人々の間に広まったことで、SNSを通じてコミュケーションをとるという体験も、違和感のないものへと変化していきています。
フリマアプリ「メルカリ」を開発するメルカリは、地域コミュニティアプリ「アッテ」という新しいアプリをリリースしました。元々、クラシファイドサイトと呼ばれる掲示板サービスが存在していましたが、それをスマートフォンとアプリで再発明しようという動きが見られます。
「アッテ」や同ジャンルのクラシファイドサービス「ジモティ」などは、物々交換や取引を中心とした地域コミュニティサービスではありますが、地域コミュニティへの注目度は増しています。
Airbnbのような民泊に用いられるサービスも地域とのつながりを重視し、オンデマンドサービスと呼ばれる注文からわずかな時間で配達やサービス提供が受けられるサービスも地域性が高い。
現代は、様々な確度からごく狭いエリアを対象とする「ハイパーローカル」な流れが生まれてきています。ご近所SNSも、こうした流れにさらされることになるでしょう。
以前、マチノコトオープンダイアローグでは、クックパッドのお出かけサービス「Holiday」のコミュニティマネージャーをされている谷里穂さんにゲストでお越しいただきました。
「Holiday」は、写真と文章を組み合わせて気軽に「おでかけプラン」を投稿出来るサービス。ウェブサービスでありながら、コミュニティマネージャーの谷さんが中心となってスタッフが全国を回り、ワークショップを実施しているという特徴があります。
地域に根ざしたサービスであり、サービスの良さを知ってもらうためにはオフラインの活動も重要になってきます。先ほど紹介した「Nextdoor」も、近隣住民ひとりひとりに登録してくれるように呼びかけていくといった、地道な活動を行っていたそうです。
「はじめの一歩はスケールしないことに取り組む」ーーご近所SNS「Nextdoor」の共同創業者がユニコーン企業の作り方を語る
「マチマチ」もオフラインの活動を展開しており、先日は代々木上原・富ヶ谷エリアで街歩きイベント「マチマチまちあるき」を開催。
イベントの企画にはコミュニティデザインで知られるStudio-Lのスタッフも関わり、近隣に住む人たちが交流しながら、街の情報を共有していました。
こうした活動を積み重ねていくことで、人々がサービスを認知し、街に対する関心を高め、アクティブなユーザが広がっていくのではないでしょうか。もちろん、サービスは継続的に改善必要があることは前提とした上で。
「私たちは、行政と民間のサービスに頼りすぎています。もっと、市民同士がつながり、活動することで可能なことは増えるはずです。「マチマチ」では、その手助けをしていきたいと思っています」
そう六人部さんは語ってくれました。
忘れてはならないのは、便利なサービスが登場したからといって、街に暮らす自分たちが何もしなくてもいいわけではないということ。あくまで、街の主体は自分たちです。サービスが課題を解決してくれることに期待しながら、けっして頼り過ぎることのないように活動していきましょう。
それが、結果的に地域が抱える社会課題の解決へとつながっていくはずです。
コメント