マチノコト

2016.5.27

ご近所から変える、ご近所とはじめる、まちづくりのかたちーー「マチマチ」六人部生馬さんとの対話から

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マチノコトでは、「マチとの関わりたい」「マチに対して何かアクションを起こしていきたい」と考える人たちで集まり、話しあう場としてマチノコトオープンダイアローグを毎月開催しています。

これまでに、「holiday」の谷さん、「HAB-YU」の高嶋大介さん、「HAGISO」の宮崎晃吉さんをゲストにお呼びしました。そして、5月7日に開催した同イベントでは、ご近所SNS「マチマチ」を運営する六人部生馬さんに登壇いただきました。

六人部さんから、マチマチのサービスについて、その開発までの経緯、運営するなかでの気づきや、海外のご近所SNSのトレンドなどについてお話いただきました。

マチマチで「ご近所さんと話そう。」

マチマチ

大学卒業後、孫正義さんの元で資金調達の業務や、メガネ専門ECサイトなどの運営を行っていた六人部さん。その後に、取り組みはじめたのが「マチマチ」でした。

マチマチは、ご近所の方と近隣のお店、イベント、防犯・防災などの情報交換を行うためのSNSです。コンセプトは「ご近所さんと話そう。」であり、その地域に住んでいる人だけしか使えません。

そのため、ユーザー登録の際には”住所登録”が必要になります。それは、近所だからこそのユーザー同士の安心感を担保するため。

「SNSを利用するためのハードルを敢えて上げることは、サービスの肝である」と六人部さんは話します。

オフラインでつながる、オンラインで続く

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マチマチでは「ようこそ」「ありがとう」ボタンを活用しながら、ユーザーが自己紹介をし合ったり、地域情報をやり取りしたりすることができます。

地域のお勧めグルメや公民館のお知らせ、「折りたたみ自転車要りませんか?」の譲渡などの投稿が行われ、会話が広がっています。

そういった情報交換を行うようなSNSや他サービスにもありますが、六人部さんの次のように言います。

六人部さん「近所に住んでいる人が実名で『あそこの店員が気さくで〜』のような話が出てくると、既存の口コミグルメサイトとは違ったコンテキストで価値を感じやすくなるのではないかなと思います。ちょっとした地域の情報がきっかけとなり、交流が生まれていたりもします」

その交流は、オンラインに留まらず、オフラインにもつながっているそうです。

六人部さん「花見などの町内会イベントはそれ一回きりで終わったりするのが、マチマチをきっかけにユーザー同士が出会って、オンラインで続くような流れもあります」

オンライン上のマチマチ内で発信された情報をもとに、ご近所さん同士がオフラインで知り合い、そこで築いた関係性をもとに、またオンラインでも交流を繰り広げていく、というような循環が生まれているようです。

町で暮らすとき、ハードよりもソフトが大事

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もともとは、不動産で新規事業をはじめようと準備していた六人部さん。しかし半年ほど模索するなかで、「家を探すときに、町のコミュニティなどの”ソフト”の部分をわかった上で、探せたほうがいいのではないか」と気づきました。

それと同時に、「地域コミュニティがそもそも減っている」現状に対して、地域コミュニティを醸成するためのサービスをやったらいいんじゃないか、というのが「マチマチ」をはじめるきっかけになりました。

FacebookやTwittereなどを通じて、遠くにいる人とも繋がりやすくなったのに、「ご近所さんとは、こんなにも近くにいるのにつながるのが難しいのはなぜ?」という疑問もサービスの着想となったようです。

自分たちのことは自分たちで解決していきたい

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お子さんが生まれ、独身時代からライフステージが変わったことで、町の見方が変わったと六人部さん。「あそこの道が危ない」「こういったお店が足りないよね」など、町の課題を感じることが増えたとか。

ただ、掘り下げてみると、そういった課題を気付いたとしても、日々の忙しさで実際にアクションにはつながりにくい。また、どこに相談しに行っていいのかわかりにくい。そういった”課題の課題”にも気付きます。

六人部さん「もっと気軽に、自分たち自身が思ったことをアクションにつながるとか、町の課題を共有して大きな動きにつなげられるといいな、という思いがマチマチにはあります」

そうやって、行政ではなくその地域に住んでいる人たちが自分たちで解決していくためのツールとして活用してもらえるように、サービスがつくられてきました。

「Nextdoor」など、世界で広がるご近所SNS

国内におけるご近所SNSとしてマチマチはサービスを開始しましたが、海外でもすでにさまざまなサービスが提供されています。例えば、英国の「streetlife」もその一つです。六人部さんは、米国で展開する「Nextdoor」をマチマチの参考にしたサービスようで、マチマチの話だけでなく、ご近所SNSの動向としてNextdoorについてもトークの中が触れていただきました。

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2010年に米国で開始したご近所SNSの「Nextdoor」は、現在では100万を超えるユーザーが登録しており、全米4万以上の地域で展開しています。

ご近所付き合いの再構築を図るためにユーザー登録の際に住所登録を行っており、地域限定での情報公開を行うハイパーローカルメディアなサービスです。

特徴的なのは、ニューヨーク市などの行政と提携することで、地域情報の発信だけでなく、住民の声を拾う行政の窓口としての役割を担っていること。行政の公式アカウントが同サービス内にあり、日本で言うところの市報や区報などの情報発信、相談窓口などがサービス上で展開されています。

こうした民間サービスが行政と連携することで、住んでいる人にとっても自治体との距離を縮めやすい効果があるようです。

さらに、特徴的な機能として「リード」という制度を設けています。サービス内に”町の名士”とも呼べる地域のリーダー的存在が、サービス活性の手助けとなってもらえるようアプローチをしていること。地域の顔とも呼べる人たちが、率先して地域住民同士をつないだり、盛り上げ役になることで、住民同士の交流が深まりやすくなっています。

マチマチをつくるうえで、Nextdoorを参考にした部分は大きいと六人部さんは話します。他サービスを分析は続けながらもマチマチの運用を開始した今、地域とテクノロージの関係性について次のように考えます。

六人部さん「米国でも、Nextdoorをうまく活用できている地域と、そうでない地域があります。サービスを使えばそれで地域コミュニティが活性化するわけではありません。

当たり前かもしれませんが、テクノロジーを入れたからといって、全く何もないところにいいものができるかと言われると、それは違います。テクノロジーはツールでしかなく、使い手である私たちがどう活用しようと考え、行動するかが重要になると思います」

マチマチにおいても、Nextdoorの「リード」のような地域のキープレーヤーとなる人に、どのようにサービスを活用してもらうのかが今後の課題とのこと。

また、マチマチが使用可能な地域(2016年5月時点では、東京都渋谷区のみ)においては、オフラインのワークショップも行いながら、ユーザーを増やし、居心地のよい地域コミュニティを生めるような展開予定となっています。

今後、開発の体制が整い次第、特定の住所に複数人のユーザー登録が行われると、その地域のページが開設されるように、準備を進めていこうとしています。あわせて、随時サービスのアップデートを図っているようで、ユーザーの意見を反映させながら機能を追加していくようです。

近所って、どこまで?

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マチノコトオープンダイアローグでは、参加者同士での対話、参加者とゲストの対話の時間も設けています。今回も、さまざまな議論が飛び交いました。

「マチマチの中高生の利用は?」「住んでないけど、その地域に縁のある人を取り込む可能性は?」「引越しの前後でのマチマチの利用をどう考えるのか?」など、多様な立場と視点での声を聞かせてもらいます。

“ご近所SNS”のマチマチにおいて、「近所って、どこまで?」という問いも浮かび上がってきます。

六人部さん「”近所”の概念は、みなさん違います。それは何に基づいてるかというと、ライフスタイルが違うからなんですね。

例えば、隣町の幼稚園に通っていたり、通勤の駅が住んでいる場所と逆方向だったりすると、自分のなかの”近所”の範囲は違ってきます。マチマチの現状としては中心点から800mに入る”徒歩圏内”エリアを近所としてます」

最後のまとめとして、マチマチは、住んでいる人が自分たちのことを解決するためのツールとして使ってもらいたい、行政・商店の人たちとの連携の仕組みをうまくつくれれば、というような想いが語られます。

六人部さん「テクノロジーはあくまでツール。ハードがあっても、ソフトが機能しなければ廃れてしまいます。地域に不可欠なテクノロジーを取り入れることで、広がる関係性もありますよね。こうした、ウェブ上で地域の交流が可視化されることで動きはじめるコミュニティもあるはず。うまく使いこなす人たちをサポートしていけたら」

 「遠くの親戚より近くの他人」という言葉がありますが、ご近所でのコミュニケーションの温度が、その町での暮らしに影響していくはずです。普段、すれ違ったときに「おはようございます」と言える関係性はあるかどうかで、緊急時の拠り所としての防災コミュニティにもつながります。

都市と地方に比べたとき、都市のほうがご近所付き合いがしにくい構造はあるかもしれませんが、コミュニティのあり方、捉え方を変えられれば、地域とのつながりやすさも変わってきます。

「近いがゆえにできること、すぐにはじめられることとは?」、「そのためにテクノロジーとどう付き合っていくか?」という問いについて考え、学びのある土曜日の朝となりました。

マチノコトオープンダイアローグは、テーマを変えながら毎月開催しております。イベントの情報は「Meetup」上のオンラインコミュニティでもお知らせしています。よろしければこちらにもご参加ください。

次回のマチノコトオープンダイアローグのテーマは、「地域と医療」です。ご関心のある方はぜひチェックしてみてください!

地域に必要な医療について考えるーー6月18日に「マチノコトオープンダイアローグvol.5」を開催

大見謝将伍

大見謝 将伍

プランナー。 1988年生まれ。伊平屋島(沖縄)出身。東京-沖縄の2拠点で、カクテル - 場 − メディアづくりを軸とした、つたえる-つなぐ-まぜるための活動を「coqktail」でやってます。 「おきなわ移住計画」代表 -「水上家」管理人 - 「京都移住計画」広報、「焦点街」編集長など。自由研究テーマは、移住 - 民間伝承 - はたらき方 - 商店街です。

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