マチノコト

2015.9.10

岐阜県内と県外の人が力を合わせて地域の魅力を掘り起こすーー市民による自律分散型イベント「長良川おんぱく」プロデューサーの蒲勇介さん

長良川おんぱくnn2

地域のアイデンティティを突き詰めていくと、そこには自然資源と歴史が深く密接していることが分かります。

しかし、日本各地、さまざまな地域が独自に持つ資源から歴史を重ねているはずなのですが、ずっと同じ地域で暮らしを送っていると、なかなかその深みやオリジナリティには気づかないものです。

異なる土地で育った他者、あるいは一度地域を出て他の地域で経験を重ね戻ってきた人々によって、地元独自の文化や、誇るべきポイントが再評価され、伝承されていくのかもしれません。

岐阜市も、豊富な自然を生かしたまちづくりが古くから行われてきた都市ですが、近年、その歴史に基づいた取り組みが数多く行われています。

長良川と金華山を中心に町の形成が行われてきた、岐阜市

長良川1

岐阜市は、日本でも屈指の水量と水質を誇る清流「長良川」と美濃山地の南西端に位置する「金華山」によって、町が形成されてきました。

岐阜の町並みの形成は、斎藤道三や織田信長が、物流の中心に「長良川」、防衛機能の優れた「金華山」に着目し、城下町と政治的拠点を構えたことに起因します。

江戸時代以降も、商業都市「岐阜町」として経済の中心を担い、川湊に運ばれる材木、美濃和紙、竹などを扱う問屋業が発展し、それらを利用した提灯・団扇・傘などの生産も盛んになりました。

長良川2

現在も岐阜市には優れた文化的景観が残っており、長良川の扇状地に立地し、鮎の伝統漁法が行われる鵜飼地区と、伝統的な町家が立ち並ぶ川原町地区は、長良川の堤外地、旧城下町地区は、金華山西麗に形成されています。

長良川が育んだ岐阜の物語を発信、NPO法人「ORGAN」理事長、蒲勇介さん

長良川おんぱく蒲さん

その岐阜において長良川が生んだ地域の文化を発信し、さまざまな取り組みを行っているのが、NPO法人「ORGAN」理事長であり、「長良川おんぱく」においてプロデューサーを務める蒲勇介さんです。

長良川を拠点に伝統的な文化を形成してきた岐阜市ですが、岐阜県内出身者が、岐阜に対して誇りを持てず、価値を見出すことが出来なくなっているそう。蒲さんも当初はその1人でした。

蒲:「うちわ屋さんで、水うちわを見つけたことがきっかけで、この町に何もないと思っていた僕が、長良川で育まれた美しい伝統工芸があることを知ったんですね。

長良川の水運が、美濃和紙を運び、水揚げされて、提灯・和傘・団扇が作られ、明治の時代に、パリ万博などで展示された結果、ヨーロッパで日本文化が流行し、岐阜の提灯や団扇がヨーロッパの絵画に描かれ始めた。

岐阜市のアイデンティティは長良川という文化発信拠点から育まれており、その背景には長良川の水運や地勢があって生まれた産業と、美しく世界に誇ることの出来る商品があると分かった。そこに地域作りのコンセプトを描いたんです。

岐阜内外の人にそのアイデンティティを感じて貰い、岐阜市に住んでいる人たちが語っていけるものを作りたいと。」

よそものである若者と地域の若い世代が結びつく、「岐阜町若旦那会」

長良川おんぱく6

長良川上流の郡上市で生まれ、岐阜市の郊外で育ち、福岡・九州芸術工科大学に進学。学生時代から、ライターや大学の広報誌で編集デザインのバイトを行っていた蒲さんは、地元・岐阜にUターンして「ORGAN」というフリーペーパーを作成するなど、魅力を発信するべく活動を行います。

2007年には岐阜市の近くに古い家を借りて、住居兼事務所として地域コミュニティデザインや、お年寄りのたまり場事業、古い建築物を生かすワークショップなどを行いつつ、ボランティアスタッフや、学生が集う拠点が形成されていきました。

蒲さんは、デザイン事務所で生計を立てつつ、地域のイベントに参加する日々を送るなかで、お年寄りの多い町のなかで、ちらほらと若い世代がいることに気づきます。そこで結成されたのが「若旦那会」でした。

蒲:「お寺の副住職と話しているうちに、若い世代を集めて飲み会をしようという話になって。すると、和菓子屋や、粉屋、パッケージ屋などの若旦那が集まってきたんです。そのうち、飲み会がワークショップになって、『若旦那会』というものが出来ました。」

岐阜町若旦那会」は、地域で担い手がいなくなり、行われなくなった地域行事を復活させるなど、地に根付いた活動を展開していきました。

2010年頃には、岐阜の地域の魅力を生かした体験プログラムがちらほらと生まれ始めるなど、岐阜内外で土地の魅力を再認識し、発信する動きが見られるようになってきました。

そうして2011年に生まれた岐阜の長良川に焦点を当てた、新たな取り組みが「長良川おんぱく」です。

岐阜に関わる人々が体験から生業を見出していく、「長良川おんぱく」

長良川おんぱく2

「岐阜の本物に出会える小さな旅」をキーワードに2011年からスタートした「長良川おんぱく」。

食や、まち歩き、芸術、伝統など岐阜の地域資源に体験を通して触れることの出来るプログラムから構成され、2015年現在、180のプログラムが用意されています。

去年は13700人が来場した「長良川おんぱく」ですが、蒲さんが全てプロデュースしているというわけではなく、市民による自律分散型で行われています。

長良川おんぱく7

蒲:「岐阜の町が持つ閉鎖性のなかで、地縁組織やまちづくり、観光、行政がばらばらだったのを一体化させたかったのと、高齢者中心で物事を決める岐阜の気風を若者や女性の参画から変えていきたいと思ったんです。

目的は岐阜内外に向けて、長良川が育んだ地域の誇りや魅力を発信し、さまざまな人たちが岐阜県に出入りすることで、岐阜市や近くの岐阜県内の市町村の魅力を地域の人たちが再発見していくこと。

『長良川おんぱく』への出店を経て、固定客の増加、中高年層へのアプローチ、ブランディング、テストマーケティングなど指標や問いかけを設定し、長良川が持つ資源を商品、体験プログラムとしてパッケージングし、最終的には、自分の店や商品、サービスに繋げていくような『実践』と振り返ることの出来る『集積』としての場があればと思います。

ただ僕たちの目標は、あくまでも『長良川が育んだ魅力・資源を伝えていくこと』なので岐阜らしさ、地域らしさを意識したプログラム作りをお願いしています。」

継続することで可能になる非日常と日常の結び付け

いつでもおんぱく

「長良川おんぱく」開始から4年が経ち、おんぱく自体への固定客も生まれ、プログラム自体も大幅に増加。長良川を拠点にさまざまなアプローチが実験できる場として、ファンやコミュニティが育ってきました。

その効果は既にあった観光資源にも影響を与えているようで、長良川中流域にある温泉街「長良川温泉」は、「長良川おんぱく」開始後、日本の温泉100選に初めてランクインし、年々順位を上げています。

5年目を迎える今年からは、年1回開催の「長良川おんぱく」に加えて、いつでも参加可能な体験プログラム「いつでも、おんぱく」もスタート。開催日を限定せずに、いつでも申込み可能な体験プログラムが用意されています。

長良川デパート

さらに、おんぱくパートナーが作る食材や商品を集め、作り手(生産者)のストーリーを紹介し、買い物と支援を同時に行うことの出来る、新たなショッピングサイト「長良川デパート」も始まりました。

蒲:「4年間『長良川おんぱく』でプログラムを提供し続け、磨いてきたものを、観光客に向けて常時体験可能であることを示すために、「いつでも、おんぱく」をスタートしました。

日常生活のなかで遠方からも「おんぱく」に関わることの出来る販売プラットフォーム「長良川デパート」も、情報発信を重ねて、長良川ブランドを確立していこうと地道にやっています。

長良川温泉も人気を集めるようになりましたが、定期的なイベントがあることで旅行会社もパッケージを作りやすくなりますし、岐阜県が進めていた訪日外国人向けの政策も活きて、こういった連鎖が成果を生んでいきました。」

都市と農村の相互補完が行われる岐阜という土地

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岐阜にUターンし活動を推し進めて12,3年が経ち、さまざまな活動を並行して推し進めれば推し進めるほど、新たなやるべきことも見えてきたそうです。

蒲:「地方都市の方が、アイデンティティが希薄になりがちで、地域の可能性を模索しにくい気がします。岐阜県で言えば、高山・白川郷に焦点が当てられがちで、岐阜市内はあまり日の目を見ません。

でも岐阜市は、都市の経済圏が周辺の農村を支え、農村部から都市圏の人材は支えられ、都市・農村の相互補完が成り立ち、持続可能な地域が構成されている。

長良川を通じて、岐阜という都市と郡上・美濃という農村が繋がっていて、その関係性の中で地域のアイデンティティや誇りが形成され、長期的な意味での持続可能な長期経済、資材循環が行われているんですよね。

僕自身も、岐阜の地方都市としての可能性を模索し、個々の物語の素晴らしさを感じて、繋ぎ合わせていくうちに、大きな物語が形成されていった。その根源には長良川があったし、その魅力をさまざまな形で伝えていきたい。」

クラスか岐阜

新たな取り組みとして長良川沿いの町家を含めたエリアマネージメントを考えているんだそう。事務所近くはお店も少なく、お昼ご飯を食べる場所もないそうです。

蒲さんが岐阜に戻ってから行ってきた町家保存活動も順調に進み、8年ほどで15人ほどの移住者が表れ、町家を使った新規開業を行う方々も生まれています。

最近では移住促進体験のウェブページ『Classka gifu』もローンチ。岐阜県の各市町村の動きが可視化され、さまざまな動きが広がっているようです。

もとある文化の色を取り戻し、新たな風を息吹かす

おんぱく1

地域資源を見極め、歴史や伝統に基づいた拠点作りと発信は、地で暮らしを育んできた人々と、新たに魅力を感じて訪れた人々の間に隔たりを生むことなく、緩やかに両者を結び付けていきます。

地域で行われなくなった行事を再度行うことは、地元住民の願いを叶えるだけではなく、古くからの文化を尊重し、地域の源流を辿り、歴史の延長線上に新たな取り組みを重ねていくことに繋がります。

そうして生まれた「おんぱく」は、新たな興味・関心を持った層がその関心を行動へ結び付け、持続していくものにする「プラットフォーム」として機能し、自分なりの魅力の発信の仕方を模索し、実践演習することが出来ます。

定期的に長良川を拠点に、複数の体験プログラムが複合的に行われるなか、移住の窓口も開かれることで、新たな岐阜へ足を運ぶ契機が生まれ、さまざまな層への受け皿が広がりを見せています。

「長良川おんぱく2015」9月27日~11月15日開催

長良川おんぱく

2015年9月27日~11月15日には「長良川おんぱく2015」が行われます。

「岐阜の本物に出会える180の小さな旅」と銘打ち、長良川が育んだ文化を体験できるプログラムが用意されています。

それぞれのプログラムに参加するためには、電話か公式webサイトから申し込む必要があるんだそう。詳細はこちらの公式ページからご覧ください。

地に根ざした長良川の物語の一端を、あなたも担ってみませんか。

えぐちはると

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