2014.3.4
アメリカでは、ボランティアが気象情報を観測して報告する「スポッター」(http://espotter.weather.gov/)という制度があります。制度がある理由として、竜巻が年間1000件以上発生して大きな被害をもたらしているからです。気象局や関係機関に対して、質の高い目視情報を提供し防災に役立てるため、民間の人たちの投稿をもとにリアルタイム性の高い気象情報を集めているのです。他にも、1日の最高/最低気温や降水量などを観測して国立気象局に報告する取り組みなどもあります。
もちろん、「スポッター」は誰もができるわけではありません。消防士や警察官、などの専門家以外に、18歳以上で気象情報に関するトレーニングを受け、地域の気象台に登録されたボランティアです。緊急性の高い情報や、何を、いつ、どこで、何が発生したか、といった情報を報告し、気象台の予報のサポートを行ないます。
運送業者などの民間企業や、病院、学校、教会などの人たちの参加が奨励されており、また通信環境が乏しい地域の情報を集めるために、アマチュア無線愛好家も多く参加しているそうです。ここ数年では、携帯電話やインターネットによる情報収集・報告も積極的に行われています。アメリカでは、すでに29万人以上が登録されている大きなボランティア組織となっています。
こうしたアメリカの「スポッター」制度を日本政府も来年度から導入し、制度化を進めているという報道が先日行われました。ゲリラ豪雨や竜巻など、気象庁の観測だけでは捉えきれない局地的な気象災害が問題となっているなか、民間の力を通じて予測が難しい竜巻の発生につながる雲の前兆が共有されることで、気象庁は注意情報をだす判断にできます。局地的な異常気象情報を集めることで、予報の精度を上げたり迅速な避難対策の判断材料とすることができます。始めは、警察官や消防士などから募集し、その後民間にも広げていくことを想定しているそうです。
すでに、ウェザーニュースがスマートフォンアプリで現在地の空の様子を写真を撮影して報告できる「ウェザーレポート」という仕組みを導入しており、民間が持っているデータとの連携も今後は考えるべき大きな視点です。ビックデータと防災や気象情報という観点からも、気象庁が持っている情報と、民間企業が持っている情報、そして市民の人たちによるリアルタイム性のある情報をうまく組み合わせることで、より防災や地域の安全につながる取り組みが行えるかもしれません。
千葉市が実証実験を行った「ちばレポ」などのように、普段からまちの様子を写真などで撮影し、地域の情報を集約することでまちの改善につながることで、地域へのシビックプライドも生む取り組みにもなれます。普段から天気や地域の様子をみんなと共有することが、いざというときの何かの役にたつかもしれません。
アメリカでは、気象庁のオフィス(日本で言う地方気象台)が普段からスポッターに関する研修を行っているように、日本でも気象庁が本格的に運用していくと考えられます。今後の気象庁の動きにも注目です。
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