マチノコト

2016.3.13

募集〆切は今日!東北や防災に関わる全国の学生が集う『Tohoku”RE”Days2016』実行委員長弘田光聖さんに聞く「今、必要とされる復興支援の形」

東日本大震災から5年が経ちました。

みなさんにとっての「3.11」はどんな存在でしょうか?生まれてから23年間、宮城で生まれ育った私にとって「3.11」は、一生忘れることのできない出来事になりました。

当時私は、宮城の実家で震災を経験しました。

仙台市内にある実家は沿岸部から離れていたため、大きな被害はなく、家族も全員無事でした。しかし、1万人を超える死者と、震災から5年経ってもなお発見されない数千人の行方不明者を出した東日本大震災のインパクトは、相当なものがありました。私の心にも深い傷跡を残しました。

そんな中、励みになった存在がいます。震災後、全国各地から東北にやってきたボランティアの人々。彼らは沿岸部のがれき撤去や避難所での炊き出しなど、様々な場面で活躍しました。ボランティアの多くは大学生を中心とした若者だったそうです。

東北や復興支援に関心を持った若者が集い、これからの東北について議論するイベントがあります。「震災」や「復興支援」を共通項に若者が全国各地から集まり、交流を深める合宿「Tohoku ”RE” Days~若者が復興を考える2日間~」。2014年から毎年3月、宮城県仙台市の東北学院大学を舞台に開催されています。

全国各地の若者が震災について議論を深める時間「Tohoku”RE”Days」

昨年の“RE” Daysは、気仙沼ゲストハウス架け橋オーナーで九州大学4年生(休学中)の田中惇敏さんら3名の学生プレゼンと「東北と関わることで、自分はどうなりたいか?」を参加者同士で話し合うダイアログが行われました。

NPO法人底上げASHOKAJAPAN(アショカジャパン)に参画している矢部寛明さんら4名のゲストが登壇。

パネルディスカッションをもとに、具体的アクションを生み出していくプロアクションカフェが行われました。締めくくりには未来自分加者同士で東北に対する想いを共有しあう時間を過ごしました。

2016年は、3月17日(木)に開催。今まで2日間で実施していたプログラムを1日に凝縮しました。今回からは、学生だけでなく社会人に対しても参加の門戸を広げています。また、初の試みとしてアクションプランコンテストを実施。

事前に申し込みをした学生グループ約6組が、復興支援についてのビジネスプランを発表します。RE” Daysのスタッフがメンター役になるなど、プラン実現のための環境を用意するとのこと。

復興支援に関わる若者が共に支えあう場を

hirota

“RE” Daysを立ち上げたのは、関西大学社会安全学部3年生の弘田光聖さん。立ち上げ以来、現在に至るまで実行委員長を務めています。震災から5年という節目を迎える今回、これまでの“RE” Daysとは一線を画した場にしていく、と弘田さんは言います。

弘田さん:Tohoku“RE” Daysには、復興支援に興味のある大学生が全国各地から集まります。その数、毎年100名以上。その半分以上が、東北以外の人です。そんなこともあって、今まではイベントに参加する人同士のつながりを最も重視してきました。成果は二の次で、イベント以後のアクションについては、参加者の自主性に任せていた部分があったんです。

僕自身、それぞれの「やりたい」という想いを人との繋がりのなかで具体化し、行動に結び付けていくのが望ましい流れだと思っていたから。“RE” Daysにおいても、人とのつながりを重視する方向性を貫いていたんです。

震災から5年。時が経つにつれて記憶の風化は急速に進んでいます。

弘田さん:僕自身大阪と東北との2拠点で活動してきて、実際の被災地と震災に対する人々の一般的な認識とのずれを実感する場面は少なくありません。中には「もう復興は終わったよね」という認識を持った人もいるんです。

仙台市内中心部の繁華街は、震災以前の賑わいを取り戻しつつあるものの、少し車を走らせて沿岸部に出ると、辺り一帯更地が広がっています。「復興」とは程遠い状態とも言えます。

弘田さん:現実問題として「復興」までは、まだまだ道半ばです。地域によっては「復旧」から抜け出せない所もあります。震災直後と変わらないニーズを持つところも少なくありません。仮設住宅周りの雑草除去や被災地の子どもへの学習支援でも何でもいい。できるやり方で支援を続けることから、被災地の誰かの力になれる。それは震災直後も現在も変わりません。

「仲間を増やして終わり」ではなく「被災地を少しでも良くしたい」という当事者意識を持った人を増やし、具体的な活動をするプレイヤーを育てる段階に入っています。今回の“RE” Daysでも、そういったフェーズの変化に合わせ、プログラムを練っています。

東北は、自分と向き合うきっかけをくれたかけがえのない場所

弘田さんは、なぜ東北に向き合い続けようとするのでしょうか。高校時代までを高知県で過ごし、現在は大阪に暮らす弘田さん。初めて東北の地へ足を踏み入れたのは、震災から5か月後のこと。震災当初から関心を持っていた、復興支援ボランティアに参加します。

弘田さん:初めて東北へボランティアに行った時、僕はあるジレンマを抱えていました。幼少時から続けていた野球で、レギュラーポジションが取れず、モチベーションを高く保てない日々が続いていたんです。

「自分は誰からも必要とされていないんじゃないか」部活にも勉強にも全力で向き合えない自分に嫌気がさしていました。東北でボランティア活動をすれば、誰かに必要とされる自分でいられるのではないか、と思ったんですよ。

実際に東北でボランティア活動をして、テレビで見た以上の被災地の惨状と、自分自身の無力さに歯がゆい思いをした、と弘田さんは言います。

弘田さん:中途半端な気持ちで被災地に足を運んだ被災地の人の為に何もできない自分に、不甲斐なさばかりが募りました。一方で、震災によって家族を亡くしても一日を精いっぱい生きようとしている、被災地の人々のたくましさに触れ、東北の人にもっと全力で向き合っていきたい、と決心します。

被災地から遠く離れたところに住む自分でもできる支援を続けよう。その思いを胸に、大学進学後は、社会貢献の日常化を意識して楽しい防災を学ぶ機会や多様な価値観を提供する関西の学生団体『Investor(インベスター)』に加入します。

Investorでは、東北へのバスツアーや防災キャンプといったイベントの企画や運営を行いました。活動を続けていく過程で抱いた、ある問題意識がきっかけで、”RE” Daysの構想が生まれます。

弘田さん:震災から2年目ぐらいまでは、全国各地の学生ボランティアの連携が綿密で、それぞれがモチベーション高く活動に向き合っていたと思います。しかし時が経ち、震災関連の報道が激減したのに伴い、記憶の風化が叫ばれるようになりました。

学生ボランティアも「風化」の例外ではありませんでした。団体間の連携が衰退していったことで、復興支援に関わる学生の数も減っていったんです。そんな状況をなんとか打破したかった。同じ思いを持った仲間たちが、横断的に繋がりを深める場を作っていけたら、結果的に学生ボランティアのモチベーションが上がっていくのではないかと思い“RE” Daysを立ち上げました。

“RE” Daysは、2014年3月に初開催。過去二回の開催で、全国各地で震災復興活動に関わる大学生約100名が集まり議論を交わしました。それぞれが東北への思いを再確認し、その熱量をそれぞれの持ち場へと持ち帰りました。

今回Tohoku“RE” Daysに参加する人に求めることは何か、と尋ねると弘田さんはこう答えてくれました。

弘田さん:今回の“RE” Daysには、アクションプラン発表者もしくは参加者としての2つのかかわり方があります。まず、アクションプラン発表者。発表者には、立案したプランを絶対実現してやるんだというくらいの気概を持って本番に臨んでほしい。そして、参加者には彼らをとにかく応援してあげてほしい。

“RE” Daysという一つの場を共有した仲間同士が協力しながら、志を実現してくれれば本望です。僕たちスタッフも全力でサポートしていきます!

弘田さんは、被災地への思いを力強く語ります。

弘田さん:地元の人が、地域の復興に対しどう声をあげて、行動していくかが一番大事だと思います。アクションは別に「特別なこと」じゃなくていい。普通に毎日を生きていくだけでも十分なんです。

何よりも「まだまだこれから。震災から5年経った今だからこそできることがあるんだ」という気概をもつことが必要なんです。そこからまちづくりや復興などにの新たな動きに繋がっていくのではないでしょうか。

自分と向き合うきっかけをくれた「東北」は、「震災」や「復興支援」という枠組みを超え、弘田さんにとって、いつしかなくてはならない大切な場所になっていました。

弘田さん:僕のように、被災地には住んでいない人の役割って、復興に向けて立ち上がっている地元の人をサポートすることだと思うんです。「僕たちはあの時のことを忘れていないですよ」という思いを何らかの形で示して、応援し続ける。

「東北」は、僕の人生における価値観を大きく変えてくれた、かけがえのない場所です。僕にとって大切な居場所になった東北へできる限りの恩返しをしていきたい。その一心で僕は動き続けます。

筆者自身も、”RE”Dayのような「復興支援に関わる、初めましての人同士が集まる場」に何度か足を運んだことがあります。そこにいるのは、様々な場所からやってきた大学生。バックグラウンドもバラバラであるにも関わらず、「東北」や「支援活動」を共通項に何らかの縁で出会い、繋がった人たちです。

同じ関心を持ち、方向を向いているからでしょうか。すぐに打ち解け、昔からのなじみのような関係になれます。震災により多くの人の命や生活が奪われましたが、同時に新しいご縁やきっかけが生まれた出来事でもあります。今回の”RE” Daysでもまた新たな出会いが生まれ、化学反応がおこることでしょう。

Tohoku ”RE” Days、3月13日まで参加者募集中!

2016年のTohoku ”RE” Daysは、3月17日に開催予定。現在、参加者を募集しています。東日本大震災から5年という節目だからこそ感じられる、若者による復興支援への意志にふれてみてはいかがでしょうか。申し込みはこちらから。

Tohoku”RE”Days2016

日 時:2016年3月17日(木曜日)10:00~19:30

場 所:東北学院大学 土樋キャンパス

対 象:学生、社会人誰でも参加可

定 員:100名

参加費:1000円(活動支援金)

主 催:Tohoku “RE” Days 2016実行委員会

共 催:東北学院大学災害ボランティアステーション

後 援:復興大学災害ボランティアステーション、仙台市

コンテンツ:基調講演、Workshop、アクションプラン発表、情報交換会(カテゴリー)

鈴木里緒

riosuzuki

1993年宮城県出身。現在は、仙台市に拠点を置きながら、山形の大学で学んでいます。大学では商店街の活性化をはじめとするまちづくりについて学んでいます。働き方や地域からの情報発信について関心があります。

コメント

コミュニティに参加する

ページトップ