マチノコト

2015.9.25

市民が自らの手で課題を解決!ゴミ出しアプリ「5374.jp」を作るワークショップを開催しました

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みなさんは、「ゴミ出し」に困った経験はありませんか?今日が何ゴミの収集日か?このゴミは何ゴミか?長い間同じ地域に住んでいても忘れてしまうことがありますよね。

以前、マチノコトではゴミ出し情報が一目でわかるアプリ「5374.jp(ゴミナシ ドット ジェーピー)」を紹介しました。

「5374.jp」は、いつどのゴミが収集されているかを見やすく表示したウェブアプリ。自分が住んでいる地域を選ぶだけで、「燃やす」「資源」「びん」「燃やさない」に分別されたゴミが、いつ捨てる日なのかがわかり、それぞれのゴミの区分の一覧も記載されています。

実はこの「5374.jp」、それぞれの地域に合わせてカスタマイズ可能なんです!マチノコトでは、8月9日に自分たちの地域で使える「5374.jp」を作成するワークショップをシバウラハウスで開催。今回は、その模様をレポートします!

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ITを通じた地域課題の解決を

まずは、現在開催中の参加型ゴミ拾いキャンペーン「海の日ごみゼロアクション」の紹介から。

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続いて、5374.jpを開発した石川県金沢市で発足された非営利団体「Code for Kanazawa(CfK)」の代表である福島健一郎さんのトークに。

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福島さんは、元々、ITのソフトウェア会社を経営したり、大学や博物館が所有するデータを市民にオープンにする「オープンデータ」という考え方を広めたりしている人物。

欧米では、市民一人一人が政府や政治に関わり、自分たちの住む地域を良くしていこうという活動が増加しています。その動きの一つが「Code for America(CfA)」という団体です。

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福島さん「Code for Americaが開発したプログラムに、「町での積雪時に消火栓が雪に埋もれて分からなくなってしまう」という地域問題を市民が解決できるように、グーグルマップと連携して市民に消火栓の場所を分かるようにして除雪を促した、というものがあります。このプログラムの存在を知ったとき、感銘を受けました。」

福島さんはこのプログラムの存在を知り、「地域にこんなに直接的にITが役立っているなんて、すばらしい!」と感動したそうです。

福島さんはITが世に貢献しているのかなかなか分からないと感じていたことから、まずは自分の地元である石川県で地域問題を解決するプログラムを開発し、市民が実際に解決していけるような活動をしようと、Code for Kanazawaを立ち上げました。

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福島さん「初めは9人だったプロジェクトメンバーも今では67人と増え、他の地域へも伝播。現在、Code for Kanazawaが開発した「5374.jp」は国内の80ヶ所に広がっており、現在は100ヶ所への展開を目指しています。」

ゴミ出しを見やすく、わかりやすく

ゴミ出しアプリ5374.jpの利点は2つ。まず1つ目は、アプリの見やすさ。Code for Kanazawaがアプリを作る際に、最も大切にしたのはパッと見たときに瞬時にわかることだそうです。

確かに、5374.jpを見てみると、4色の種目ごとに分別されていて、今日が何ゴミなのかがすぐ分かります。既存のアプリは、日付を入力するなどタップ回数も多く不便なことが多いことに目をつけて、誰もが分かるようなデザインになっています。

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2つ目は、細かく分別について分かる機能が備わっていること。例えば燃えるゴミの欄をタップすれば、あいうえお順になって一覧を見ることができます。この機能によって、今まで探しにくかったゴミの分別が手軽に行えるようになります。

福島さん「誰もが扱えるようなデザインと機能を意識した結果、経済産業省からオープンデータビジネスコンペティションの最優秀賞を受賞した他、いくつもの賞を受賞することができました。」

各々での解決が難しい地域問題に取り組むためには、アプリの開発だけで終わるのではなく、開発後にアプリを利用する市民の手による改良が、大きな助けになっていると福島さんは言います。

福島さん「地域の問題を、地域の人々と一緒に作ったアプリで解決することでコミュニティが広がり、アプリは新しく地域に入居する人の助けになります。私たちは、5374.jpがさらに全国へと人の輪が広げてくれることを期待しています。」

多様な参加者が集まりワークショップを開催

そんな思いを込めて8月9日に開催されたワークショップには、都内近辺に住む15人の地域に興味を持った、世代も職業も異なる参加者が集まりました。参加者人たちは自分の住む町にごとに数名のグループを組み、作業を分担してアプリの開発をスタート。

まず、「GitHub」というプログラムコードやデザインデータなどを共有できるサービスを使って、「5374.jp」を作るために必要なプログラムをコピーします。このプログラムを使って、アプリを開発していきます。

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5374.jpのプログラムコードをコピーした後は、各自が担当している地域の市役所のホームページにアクセス。ゴミ分別表を探して、表に従ってデータを入力していきます。

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「燃えるゴミ」は「紙屑」へ、など内容を入力していく作業を行った後は、実際のアプリに反映させるだけ。

自分の手で入力した内容が、一つ一つアプリへと反映されていくのはモノヅクリ心を駆り立てる作業だったようで、参加者のキーボードを打つ手も軽くなっていきました。

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メンバー同士で相談しながら、各グループについたメンターにも指示を仰ぎながら、普段、プログラミングとは全く無縁な人も真剣に作業を進めていました。

作業が進むにつれて、グループ内では進捗を報告しながら話も弾んだようです。

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こうして、プログラミングを理解する、担当地区を分担する、データを入力する、アプリに反映する、という4つのステップで進んでいったワークショップは、合計で3時間を超える作業になりました。

どの参加者も、ほぼ時間内にアプリを完成させることができたようで、安堵の表情を浮かべていたのが印象に残っています。ワークショップに参加した一橋大学4年の島崎さんは、

「アプリ作りは初めての経験でしたが仕組みはわかりやすく、新鮮さを感じながら作業ができました。誰でもできるという前振りには少し大袈裟な部分があったようにも思いましたが(笑)つまづいたときには、メンターの方々のサポートがあり、かなり助けとなりました。なんといっても実際に入力したデータが見られるようになり、出来上がった時の達成感は忘れられません!その達成感というのも、多少の難しさがあってこそでしたね」

と、充実した時間を過ごした模様。全くのアプリ作り初心者にとっては、一筋縄にはいかなかったようです。

地域によってはゴミ出しを隔週で変えているところがあり、現段階の「5374.jp」への対応は難しいために断念するという場面もありました。地域によって異なるゴミ出しの状況に対応していくためには、まだまだ改良の余地がありそうです。

普段はインフラ関係の仕事に従事する丸山雄司さんは、「仕事と全く関係のないアプリ作りだからこそ興味を持ちました。これが人生のどこかでつながるかもしれないです」と期待を覗かせていました。他の参加者も、ほぼ時間内にアプリを機能させるまでにできたようで、安堵の表情を浮かべていたのが印象的でした。

また、5374.jpを自分達で作ったことで、参加者の人たちは住んでいる地域への関心が高まると同時に、「新しく引っ越した先でもアプリがあれば迷わずにゴミが出せる」という感想も抱くなど、5374.jpの必要性についてコメントしていました。

自分が暮らす地域の課題を自分たちで解決する

生活における身近な課題である「ゴミ問題」をテクノロジーを使って解決する方法を学びながら、マチの住みやすさや人とのつながりについても考えるようなワークショップになったようです。フリーライターの美和詩子さんは以前から興味のあった「保育園マップ」作りに今回の経験が使えるのではないかと、新たな展開も聞かせてくれました。

ワークショップ後に行われた懇親会では、今後の5374.jpについて「ゴミの品目について検索機能があるといい」「ゴミ収集車が来る時間も合わせて知りたい」など、改良できそうな意見も寄せられていました。

参加者の方々は名刺交換もバッチリ、みなさん多くの刺激を受けることができたようです。この場から、さらに新しい何かが生まれることに期待したいですね。

ワークショップを通して、アプリを制作することはもちろん、新しいコミュニティを通して全国に活動が広がることを期待していた福島さん。その期待に応えられた場になったのではないでしょうか。

8月9日の「ハックの日」に合わせて今回のイベントは開催されました。シビックテックと呼ばれる、市民の課題を解決するテクノロジーが普及すると、将来、市役所から5374.jpの利用が推奨されるときが訪れるかもしれませんね。

執筆:金澤李花子 取材協力:島崎眞碩 写真:加藤甫

編集部マチノコト

マチノコト編集部

コミュニティデザインやまちづくりをテーマにしたメディアプロジェクト『マチノコト』編集部のアカウントです。

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