2015.5.1
環境が変化すると、人もそれに合わせて少しずつ変化していくことが求められます。それは暮らし方や働き方も同様です。東日本大震災から4年が経過し、新しい暮らし方や働き方に関するトピックが話題となることが増えてきました。
東北ではフェーズが復旧から復興へと変わり、新しい市場・働き方・キャリアが生まれ始めていると言われます。先日、マチノコトで紹介した「東北オープンアカデミー」も、新しい働き方、キャリアを提案しているプロジェクトです。
先日、新たなキャリアとして注目されている「コーディネート人材」の募集説明会に取材に行ってきました。
今回は、地域社会でもニーズが高まる新しい職種について紹介していきます。
「東北で起きているのは、これからの日本社会をつくる動き」ーー震災後、復興を支援する活動を続けてきた一般社団法人RCF復興支援チーム(以下、RCF)代表理事の藤沢烈さんはそう語ります。
RCFのミッションは「東北の各地域と都市、行政と企業をつなげ、コーディネートすること」。新しいビジネスを生み出し、働き方やビジネス、行政を変えていく存在として「コーディネーター」を掲げており、これから先の社会において重要な役割だと述べています。
RCFが「復興コーディネーター」と表現する仕事は、企業、NPO、行政、そして、住民といった、異なる利害関係者の意向を汲みとって束ね、方向性を示しつつ具体的な実行プランと、それを達成するためのリソースを確保し、プロジェクトを前に進めていく役割を担います。
地域をはじめ、社会の課題を解決していくためには、異なるセクターが力を合わせていかなければなりません。こうしたセクターを超える動きをリードする、企業、公共、社会という垣根を超えて活躍する人材を「トライセクター・リーダー」と呼びます。
RCFが地域で実施しているのは、「地域コミュニティの強化」と「産業振興」という2つの活動です。社会関係資本(ソーシャルキャピタル)と呼ばれる人間関係が地域に強固に存在していることが地域にとってはとても重要になります。
RCFは、人が集まる場作りだけではなくて、継続して活動していくようなチーム作り、そして行政、企業、NPOの三者による協定を結ぶよう促し、RCFが地域を離れたとしても、長期にわたって持続するような仕組みづくりまで実施しているそうです。
地域のつながりはもちろん重要ですが、軸となる産業が存在することも重要なこと。RCFでは、産業づくりもサポートしています。藤沢さんは、スペインの「サンセバスチャン」という街の事例を紹介。
この街は人口18万ほどでありながら、ミシュランの星付きのレストランが多数存在しているような、美食で知られる街。街全体で食を打ち出せた背景には、地域のシェフが毎晩集まって勉強会をし、各店舗のレシピを共有することでオープンソース化し、全体のレベルが向上するように努めたことがあります。
日本の地域は、横に閉鎖的でなかなかこうした動きが起きることは難しい状態。コーディネーターはこういった場面にも必要になりそうです。
RCFの活動のひとつに、岩手県大船渡市で資生堂の支援を受けながら、地域資源である「椿」でまちをつくる事業をつくるというものがあります。
この街の市の花である「椿」を軸に、地域住民や自治体、関係事業者、NPOなどとの連携体制づくりやコミュニティ形成、市の地域ブランディングなどを推進する「戦略コーディネーター」人材を募集しています。
「戦略コーディネーター」は、大船渡市に駐在し、各種調査や関係者との座組み形成、計画立案、生産、流通、消費等の実行サポートやイベント等の企画・実施などを担当することになるそうです。
スキルセット的にはビジネスセクターで求められるものに近い「コーディネーター」は、ビジネスセクターで活動していた人々の次のキャリアとして注目。
RCFでは、大船渡市の戦略コーディネーターのほかにも、産業支援、コミュニティ支援、人材支援を実施する「社会事業コーディネーター」を募集中。日本財団「WORK FOR 東北」というプロジェクトでも、被災地の産業再生・地域活性化を担う「復興事業ディレクター」というポジションにつく人を探しています。
キーパーソンの発掘、コミュニティの立ち上げ、立ち上がったコミュニティの伴走、情報発信、若手世代を巻き込みながらプロジェクトを進めていくなど、コーディネーターが担う役割は数多くあります。
地域の課題を解決していくために、領域を横断して活動するこうした人材の存在は必要不可欠。RCFには現在、約60名のスタッフの人が勤務しており、コーディネーターとして様々な場面で活躍しています。コーディネーターとして活動するためのノウハウが蓄積されていっているはずです。
将来、人々や組織をつないでいくような仕事をしていきたいと考えている方は、ぜひこの新たなキャリアの詳細をチェックしてみてはいかがでしょうか。
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