2013.9.13
みなさんは今まで「防災訓練」に参加した経験はありますか? 一口に防災訓練と言っても、行政主催のものや民間主催のもの、防災グッズ使用体験型訓練であったり、宿泊型の避難所体験訓練であったりと、そのタイプは様々です。
今回スタンバイは、8月24日、25日に港区にある区立港南小学校で開催された「日本財団 次の災害に備える企画実行委員会(=つぎプロ)」が主催(共催:港南防災ネットワーク)している避難所運営訓練をお手伝いしてきました。「つぎプロ」は、東日本大震災における調査と経験をもとにあるべき支援の形を追い続けている、プロジェクトチームです。訓練の内容は、参加者がそれぞれキャストとなって「スペシャルニーズを持った被災者」を演じ、1泊2日の避難所訓練を実際に行うというものです。
参加者はさらに、通常の備蓄のみを使えるAチームと、高齢者対応やアレルギー対応など、ニーズに合わせた備蓄が整ったBチームに分かれました。キャストの振り分けによって、当時のニーズの複雑さをリアルに再現しており、またA、Bそれぞれの場合に避難所としてどのような違いがあるのか、またどのような課題があるのかを実践的に把握できるものとなりました。2日目には参加者によるワークショップが行われ、「何が困った」「どういう対策がなされたらよいか」などが話し合われました。この訓練によって、首都圏で被災者がどんなニーズに直面するかを知るというのが目的になります。
東日本大震災が起きた時、多くの人々が頼りにしたのはこうした「避難所」だったそうです。総務省の調査によると避難者数は震災直後の最大時で約47万人。これが被災地人口の約20%です。そのほかにも配給や情報を求めて、自宅待機の方も多く訪れていたそうです。避難所は人々の「頼みの綱」だったのです。
しかしその一方で、震災関連死と認められた約1600人のうち、3割の方が避難所生活での過酷な環境が原因で亡くなっているのです。高齢者、障害者、病人、乳幼児、妊婦などの生活弱者の方たちは、過労やストレス、持病の悪化、感染症などにはとても耐えられません。健常者の方でも、汚いトイレに行きたくないがために自ら水分補給を避けて死に至ったケースもあります。このままの避難所体制では次の震災への対応が十分にできているとは言えない状況なのです。
「今回のような広範囲の災害の場合、従来の一点集中型支援ではなく、多種多様なニーズに応えられる準備、また想定外の事態にも臨機応変に対応できる体制を整える必要がある」と「つぎプロ」のみなさんは語ります。これからの支援は、被災地の「スペシャルニーズ(=被災者個人の独自のニーズ)」にいち早く応えられるシステムであるべきと彼らは提案します。具体的には、避難所でアセスメントを行い、ニーズを集約して早急に関連する支援団体に情報を提供すること。また、それがスムーズに行いやすいよう避難所の運営体制を整えることです。
「つぎプロ」の皆さんは、これまでにのべ378人のボランティアを宮城県に派遣し、443か所の避難所を2011年3月29日から5週に渡って巡回訪問、避難所の実態把握のためのアセスメントを実施しています。その経験をもとに練りに練った今回の訓練は、3月末に日本財団ビルで行われたものを含めて今回で2回目。それでも、まだまだ課題は出てきたとのこと。参加者も「実際に訓練をしないと分からないことが多い」と話していました。
いざという時に備えておくべきなのは被災する個人だけでなく、その時に重要な役割を果たす支援者や避難所の運営者、また避難者一人一人の行動であるということが大変印象付けられました。つぎプロスタッフの方々は、「こうした訓練を全国各地で行っていき、理想的な避難所運営のノウハウを示すモデルケースにしていきたい」と話します。震災に向けて「避難所運営力」も準備項目のひとつとして考えていかなければなりません。
またその一方で忘れてはいけないのが、震災時にどう「共助」していくかということです。参加者の気づきの中で、「役割分担の大切さを痛感した」「体に障害を負った時、他人に助けてもらうしか道がない」など、助け合いの必要性に関するものが多く見受けられました。実際に訓練に参加して、近隣の人やそこに居合わせた人たちとのコミュニケーションをどう円滑にするかを試してみるというのもそうですが、普段の生活の中でも、非常時に助け合えるコミュニティを見つけていくことが大切かもしれません。
コメント