マチノコト

2015.8.6

水辺の文化をみんなでつくろうーー市民・企業・行政が一体となって河川の創造力を高める「ミズベリング」 #umizero

mizbering

過去を振り返ると、日本人の暮らしに「ミズベ」は、切っても切り離せない存在。

炊事、洗濯をはじめ、水が生活の支えであったのはもちろん、子ども達の遊び場、人や物が移動するための水運としての役割も大きかったことでしょう。川とまちが一体になったような光景が『堀川花盛』のような画にも見られ、ミズベは、多くの人から利用されるオープンソースでした。

しかし現代では、“ミズベ離れ”が進んでいるようです。その要因としては、インフラの発達や水域の汚染、そして河川法の規制によって、日常的にも商業的にも利用しにくくなったことが挙げられます。

そういった課題を捉え、「ミズベの未来を共に創造しよう、 アクションを起こそう」と取り組むのが「ミズベリング」です。よりよいアイデアを形にするため、市民・企業・行政が三位一体で動けるような仕組みづくりをプロジェクトとして行っています。



水辺のコーディネーターが必要だった

ミズベリング(MIZBERING)は、「ミズベ(水辺)+リング(輪)」と現在進行形の「~ING」がかけ合わさった造語で、“水辺の風景とまちが一体となった美しい景観を創造し続けるムーブメント”という意味が込められているそう。

「日本のミズベ×未来想像力×ソーシャルデザイン」を掲げて、プロジェクトを推進します。代表は「SCOP」の山名清隆氏が務めますが、その他メンバーには、まちづくりのスペシャリストが集結。

machinkoto_mizbering2

2014年3月から動き出したミズベリングですが、その前身は2013年12月から始まった「 水辺とまちのソーシャルデザイン懇談会」でした。こちらは国土交通省の「水辺とまちの未来創造プロジェクト」の一環としてスタート。法政大学の陣内秀信氏を座長に、市民、企業、行政、クリエイターなど、様々な立場の視点を加え、ディスカッションを進めてきました。

その中で、ある課題が浮上。「水辺の利用者、地域住民,河川管理者などの行政をつなぐ、水辺のコーディネーターが必要だ」という気付きから、ミズベリングプロジェクトが始動することに。これまでにも、さまざまな活動を展開しています。

ミズベリング会議に、メディア発信、企業コラボまで、幅広いアクティビティ

machinokoto_mizbering4

2014年3月の「ミズベリング東京会議」以来、南は鹿児島から北は北海道まで、全国各地で計20回以上を開催してきました。「ミズベリング〇〇会議」は、トーク・プレゼン・ワークショップ・交流会を組み合わせた内容となっており、海外の水辺事例の紹介から、フロントランナーを招いてのディスカッション、そして、参加者も含めたワークショップを実施します。

また「ミズベリングインスパイア・フォーラム2015」では、ポートランド事例を共有し、参加者全員で「こんな水辺があったらいいんじゃないか?」を想像する時間に。さまざまな立場の人が足を運び、共に水辺について考える場づくり(コミュニティ)が大きな活動のエネルギーとなっているようです。

ウェブサイト内では、「水辺で乾杯!」のような水辺アクションの紹介や、「河川法とは?」を身近に学べる動画など、イベントがない時期にも、水辺で何かを始めたい人のために情報発信を続けています。

また、企業や団体と連携した水辺のアクションも。日本橋三越との期間限定ミズベリングストアや、日産のチョイモビの水辺走行実験、JR東日本とは旧万世箸駅舎をリノベーションした地域交流型店舗の展開など、さまざまなコラボレーションが実現してきました。

ミズベリングが手がける、3ベーション、5アクション、3領域

先ほども触れたように、“水辺のコーディネーター”として活動を続けるミズベリングは、3つのベーション戦略、5つのアクション指標、そして、3つの領域におけるコンテンツづくりに取り組んでいきます。

興味と関心が目覚め熱意とやりがいが集まる「水辺のモチベーション」を高め、さまざまな領域で新しい挑戦が行なわれる「水辺のリノベーション」を支援し、制度が動き投資が生まれ市場ができる「水辺のイノベーション」が起きるように(ミズベリング3ベーション)。

また、水辺の未来を考える人がつながり、水辺の可能性をみんなで堀り、水辺のチャレンジを増やし、水辺を通した街づくりを進め、水辺の暮らしをみんなで育てていく。というような、「つなぐ」「かたる」「ためす」「つくる」「育てる」を大切にしています(5つのアクション)。

machinkoto_mizbering

そして 、まちが変わり産業が起き雇用が生まれるための「まちづくり地域振興」、水辺時間が変わるための「ライフスタイル」、よりよい地域社会をつくり未来創造力を持った人を育てる「人づくり人材育成」という3つの領域の真ん中に立ち、各領域における、あるいは各領域をつなぎ合わせたコンテンツを生み出しています(ミズベリングコンテンツ展開3領域)。

そういった水辺に対する視点と、ミズベリングの具体的なアクションを重ねてみると、合点がいくものばかり。

みんなのものだから、みんなで素敵な使い方を考えよう

誰のものか分かりづらい水辺だからこそ、みんなで考え、アクションにつなげていく。そのように水辺に関わり、楽しんでもらえる人口を増やしたい、ひとりでも多く巻き込んでいきたい、という想いが伝わってきます。

マチノコトがNPO法人グリーンバードと連携して進めるキャンペーン「海の日ごみゼロアクション2015」のキックオフイベントでは、ミズベリングの真田武幸さんは、次のように語ってくれました。

20150729_machinokoto_04

「水辺は市民の自己責任感覚が成長することで、これまではできなかったことができるようになる余地があります。「シビックプライド」という住んでいる街にどれだけ誇りをもち、街を活用するチャンスを作れることができるかが大切です。また、水辺は文化が生まれる場所。水辺をうまく活用することで、都市の空白を上手く作ることができます。水辺空間を使った都市全体の価値創造にも、ミズベリングは挑戦しています」

「誰のものでもないから使えない、ではなくて、『みんなのものだから、みんなで素敵な使い方を考えよう』と考え方が変わっていくといいですよね」

参考記事

ミズベを楽しもう、みんなで“川ろう”

machinokoto_mizbering5

水辺の未来を創造するプロジェクト「ミズベリング」を通じて、さまざまな水辺の可能性に気付かされます。ちなみに、東京だけでも、神田川、隅田川、渋谷川などを始め、マチノコトでも紹介した二子玉川などの事例も増えつつあります。身近な水辺に目をやると、新たな発見があるかもしれませんね。

地域資源を活かすという観点からは、「Happy Outdoor Wedding」のようなアウトドアウェディングとしての活用も今後ひそかに期待。海辺事例はすでにあるので、参考にできるものも多いでしょう。

あくまで、水辺のアクションをする際に、単純に新しいことをやろうとするのではなく、その水辺の歴史を汲み取り、くらしとの関係性など昔の様子を深めながらも、現代だからこそできるデザイン・テクノロジーを活かし、たくさんの人が賑わう場所がつくられていくことを願います。

カッコいい水辺、行ってみたくなりますよね。水辺が変わるには、当然、人が変わらないといけませんが、ミズベリングでは、このように声を掛けます。

「川(変わ)ろうぜ」

ミズベの流れ、変わるといいですね。変えるのは、(ある種)僕であって、みなさん一人ひとりであって、みんながキーパーソン。まずは半径5m以内あたりでできる小さなことから。

大見謝将伍

大見謝 将伍

プランナー。 1988年生まれ。伊平屋島(沖縄)出身。東京-沖縄の2拠点で、カクテル - 場 − メディアづくりを軸とした、つたえる-つなぐ-まぜるための活動を「coqktail」でやってます。 「おきなわ移住計画」代表 -「水上家」管理人 - 「京都移住計画」広報、「焦点街」編集長など。自由研究テーマは、移住 - 民間伝承 - はたらき方 - 商店街です。

コメント

コミュニティに参加する

ページトップ