マチノコト

2015.9.21

東京で地域の人が集まることで生まれる価値ーー100人以上が参加した「岐阜ナイト in Tokyo」

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自分が生まれ育った過去の記憶や、大切な人の存在、忘れられない誰かと過ごした思い出、言語化は出来ないけれど、特別な思い入れのある地域を誰しも持っています。

今はその地域に住んでおらず、離れて暮らしていたとしても、折に触れて話題が地域の話に及んだ時には、つい話し過ぎてしまうことがあるかもしれません。

ただ、地域と離れ遠方で暮らしを送る人々のなかには、地域について話す機会の少なさを感じている方もいると感じます。

「○○出身なんだよね」と話しても、「へえ、そうなんだ」と軽く受け流されてしまう感覚を抱いたことがある方もいるのではないでしょうか。

地域「内」で自分の住む地域について語る機会も重要ですが、地域「外」で特定の地域を共通項に集い、その魅力や様子について語り合う場が求められているようです。

日本各地から多くの人々が移住し、働く「東京」において、「岐阜」を共通項に集い、岐阜県内各地の魅力を人や食から触れることが出来るイベント「岐阜ナイト in Tokyo」がローカルウェブマガジン「おへマガ」の主催によって行われました。

各自治体で地域の魅力を発信する動きが盛んな岐阜県

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岐阜県は、県内の各市町村で、自分たちの魅力を発信する動きが盛んな場所。「マチノコト」でも、これまでに岐阜県内で自分たちの魅力を自らの手で発信する動きを紹介してきました。

岐阜県恵那市では、恵那山麗地方の魅力ある人や情報を発信するローカルウェブマガジンを運営する「おへマガ」や、2012年から毎年開催され、今年で4回目を迎える地域体験プログラム「えなか(恵那山麗博覧会)」などの動きが行われています。

岐阜市では、長良川に根付き生まれた地域文化を、「長良川おんぱく」という形で、地域住民による自律分散型のプログラム作りが行われ、岐阜県内外から多くの観光客を集めています。

飛騨高山でも、地域の環境資源である宮川を生かした拠点「co-ba HIDATAKAYAMA」や、川の新たな楽しみ方を提案する「川床を楽しまナイト」など、古くからの資源を生かした取り組みが行われているようです。

上記以外にも郡上や、可児郡御嵩町など地域資源を武器にした新たな取り組みから地域の魅力を発信する動きが起こっています。

東京で「岐阜」を共通項に集い語り合う場「岐阜ナイト in Tokyo」

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9月11日の夜に開催された「岐阜ナイト in Tokyo」は、岐阜に縁のある人々が集うイベント。開始予定の時間前から、たくさんの人々が集まり、始まるころには100人を超える人々に。

会場いっぱいに集まった人々の熱気と賑わいのなか、ゲストトークに入る前に、今回の企画人である「ものがたり法人FireWorks」の五井渕利明(下部写真右)さんが「岐阜」を共通項に集まった人々に向けて話し始めます。

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五井渕さん:「今回の岐阜ナイトは定員を100人に設定しましたが、まさか本当に100人集まるとは思ってなかったので、びっくりしています。

東京で岐阜ナイトを開催するにあたって、当初は岐阜に移住者を増やすために行う予定だったのですが、もっと岐阜について知る機会や、移住以外の新たな関わり方が生まれればと、多くの人数でいろんな人と、お酒を飲めたらと構成を考えていきました。

私は岐阜出身ではないんです。今日集まった参加者を見ると、岐阜出身の方が半分ぐらいで、何らかの形で岐阜に接点を持つ人たちがこれだけ集まって嬉しい。

前半は恵那市、郡上市のトークゲストから恵那や郡上の最近、今をご紹介し、その後皆さんでお酒や料理をわいわいと楽しみながら、『岐阜ナイト』で出来た繋がりを起点に、岐阜を訪れたり、移住について考えたりするきっかけを提供出来ればと思います。」

恵那の魅力的な人と出会う機会を発信「おへマガ」編集長の園原麻友実さん

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最初にトークを行ったのは、岐阜県恵那市でNPO法人「えなここ」で恵那市を中心にまちづくり活動を行う園原麻友実さんです。

岐阜県中津川市出身の彼女は現在、ローカルウェブマガジン「おへマガ」の運営や、恵那・中津川の魅力に体験を通して触れることが出来る「えなか(恵那山麗博覧会)」の運営事務局などを務めています。

多様な活動を推し進める園原さんは、どうして活動拠点として岐阜・恵那を選んだのでしょうか。

園原さん:「私も、恵那で活動を始める前は『岐阜って何もないじゃん』と思っていました。とにかく地元を出たいと考え、20歳で京都に出て、仕事をして、アジアを放浪して、ありがちな「自分のやりたいことってなんだろう」という状態に陥り、地元へ戻りました。

戻ってきた当初も地元に関わって何かしたいという気持ちは全くなく、普通に働き暮らしていました。

3年ほど働いていたところに、SNSで今の所属するNPOに『関わってみないか』と誘われて、地元の面白さを自分が知らないなのではないかと思い、活動に関わるようになりました。

地域って面白いなと思い出したのが25歳ぐらいで、3年間いろんな人と出会い、さまざまなことをしながら動いてきましたが、知れば知るほど地域って面白いなと実感しています。」

現在恵那市には、恵那の面白さを感じ、暮らしや生き方を楽しみ、その楽しみ方をシェアする人が増えているんだそう。園原さん自身も恵那で楽しみを見出した人々と何かを生み出す今がとても楽しいんだとか。

園原さん:「恵那では、林業女子や狩猟女子といった20~30代ぐらいの女子たちが地域のおっちゃんたちと林業や狩猟に真剣に取り組んでいたり、過疎化率、高齢化率の高い地域で古民家のリフォーム塾を運営して地区の空き家を2件にまで減らしたりといった動きがあります。

子どもたちが古い蔵を秘密基地にするべく設計し、制作し、建築しながら大人が温かく、楽しくサポートする取り組みや、空き家のリノベーションも盛んでコミュニティスペースが運営されたり、ゲストハウスが計画されたりもしています。

恵那では、自分たちの手で暮らしを楽しく作る動きが活発で、自分たちの暮らしを見つめるきっかけづくりを私たちも積極的に行っています。

自分の町や暮らしをオープンな場でフラットな立場から考える『このマチ会議』や、『“ジモトで働く”を考える〜恵那お座敷cafe〜』など、暮らしを楽しくするような緩い繋がりが生まれる場を作りだしています。」

移住者による取り組みも積極的に行われる恵那市。

その恵那の魅力を体験するイベントも10月から行われます。

園原さん:「今恵那の移住者さんは増えていて、大阪から移住してオーガニックのレストランを開業された方、横浜から恵那に移住して農業を始めた方、林業をされている方、庭先でカフェをしている方、ゲストハウスを構想している方、デザイナーさんと、さまざまな世代、仕事を持った人が集まっていて、それぞれ暮らしを楽しんでいます。

恵那で暮らしを楽しんで生きる人たちが凄く好きで、恵那で暮らす「人」が好きだから、私自身岐阜で活動を行っていると思います。

恵那は自然も人も豊かで、初めて訪れても『ふるさとだ』と思える地域です。『ふるさとがないなあ』と想う方は、私たち恵那市がふるさとになるのでいつでも遊びに来てください。

10月4日から11月23日は、恵那・中津川の人たちが自分の魅力を発信する『えなか(恵那山麗博覧会)』というイベントを行います。今回は40人ぐらいの方々が、たくさんの体験を用意してお待ちしておりますので、ぜひぜひ来てくださいね。」

自分好みの四季を選べる「ふるさと郡上会」小林謙一さん

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続いて登場したのは、「ふるさと郡上会」、「郡上市交流・移住推進協議会」の小林謙一さんです。

小林さん:「皆さん、こんばんは。小林と申します。今回岐阜率がかなり高いので、私がここにいるのはかなりやばいです。私は岐阜出身でもないし、岐阜に関わりがあったわけではなく、園原さん、五井渕さんにご協力を頂いて、食を通して岐阜を伝えようということで、今回のイベントに参加させていただきました。

私は埼玉県の出身で、小学校、中学校、栃木県で育ちまして、実家は千葉市なんですね。高校生から千葉市で、20歳から東京で働き、岐阜には何の所縁もございません。

仕事はですね、20歳ぐらいから映像制作をしていまして、CM、PV、映画などで使用されるCG(コンピューターグラフィックス)に、いろいろ関わってました。」

小林さんが岐阜に関わるようになったきっかけはどこにあったのでしょうか。

小林さん:「40になったらこの仕事辞めようと思って始めたんです。残業時間150時間とか200時間とかで、めっちゃ楽しいんですが、長続きしないので、40になったら辞めようと。

たまたま岐阜県美濃市にある『岐阜県立森林文化アカデミー』という学校を見つけて、森に関わる暮らしをしたいなあと考えたんですね。その時初めて、岐阜を知り、美濃を知り、学生という立場での移住を行いましたが、まだ郡上というキーワードはありませんでした。」

小林さんが郡上に移り住んだのは、郡上で移住促進の活動を行う方との出会いがきっかけだったそう。

小林さん:「美濃に移住する中なかで、『地域』という視点が生まれ、郡上の移住促進の活動を行っている人とお会いし、初めて郡上に来ました。

岐阜県の中央にある郡上市は、『郡上踊り』という伝統的な文化があり、ラフティングやスキーが楽しめる川や雪といった自然資源に恵まれ、風景も綺麗。

移住的に言うと、雪が10センチしか降らない地域もあれば、3m積もる地域もある。雪も選びたい放題、四季も感じたい放題で、いろんな風景を楽しめて、素敵な町も、村も高原も楽しめるのが郡上です。」

現在は「ふるさと郡上会」において「交流」や「体験」の機会を提供し、郡上市交流・移住推進協議会で移住を促進する活動も行う小林さんは、郡上の移住人気を感じます。

小林さん:「移住促進窓口として、郡上をPRする活動を行うなかで、移住相談を年間160組ぐらい受けています。窓口を通して移住したのは16組、18組ほどで、6年間活動させていただくうちに、630組、53世帯、92名になりました。他にも郡上が大好きで窓口を通さずに移住した人もいます。

郡上の凄さはやはり水だと感じますね。子どもたちが高さ12mの橋から飛び込んだり、お母さんたちが用水で洗濯をしていたりします。

何より人が温かいんですよね。今日のイベントで、美味しいご飯を食べて興味を持ってきた人が、地元の人とお話をしながらお酒が飲める楽しい場所をたくさん用意してお待ちしています。」

映画の上映会をきっかけに地域について考える機会を、五井渕利明さん

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今回の「岐阜ナイト in Tokyo」の企画人でもある五井渕利明さんは、東京生まれの東京育ち。そんな五井渕さんが岐阜に関わるようになったのは岐阜県恵那市での「恵那”心の合併”Project」による映画「ふるさとがえり」の製作に関わったことがきっかけだったそう。

五井渕さん:「お酒飲みたいなと思って、声をかけるとみんな集まってきてくれるんですよ。いろんなことがじわじわ来て、こういう人たちと生きていきたいなと思わせ、僕に仕事を辞めさせました。」

五井渕さんは、地方公務員の仕事を辞めた後、現在は映画制作会社やコミュニティづくりのNPOなど複数の会社でフリーランスとして働いています。

五井渕さん:「『ふるさとがえり』という映画を2010年にクランクインロケして、2011年から映画館では上映せずに『ふるさとの事を考えたい』、『地域で何が大事か見つけたい』、『語り合いたい』と上映会を企画したい人のところで上映しており、現在、47都道府県で1200回ぐらい上映会を行いつつ、自分の仕事にしています。

この映画は、『ふるさとがえり』と言う名前ですが、『ふるさとに帰りましょう』というテーマを持った映画ではないんです。映画を見た人に対して何を大事にして生きていきたいのか、どこで暮らしていきたいのか問いかける映画なんですね。

今日も皆さんに『岐阜』というテーマで集って頂き、出身地域の人もいれば、自分が生まれ育ったところではないところに、暮らしたい、移住したいという人が混ざり合い、盛り上がるなかで暮らしや生き方について共有する時間を取りました。

地域に対して想いを持っている人と関わりながら仕事をしていることがとても楽しくて、『岐阜』というものをテーマにそんな集まりが出来たらと考え、今日は皆さんに集まってもらいましたが、今日をきっかけに岐阜をテーマに繋がっていってほしいなと思います。」

岐阜の食を味わいつつ岐阜県で活動を行う方々のプレゼンも、交流タイム

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岐阜県で活動を行う3人のトークが終わった後は、岐阜県の食を味わいながら、集まった人々との交流を楽しむ『交流タイム』が取られました。

提供される料理にも、岐阜県の名産が並びます。栗きんとんや、明宝ハム、明宝トマトケチャップ、めいほう鶏ちゃん、中津川・チコリ村で取れた西洋野菜ちこりで作った焼酎や、長良川の鮎など、生産地の紹介を盛り込みつつ、実際に楽しい会話とともに味わうことができました。

食事の合間には、岐阜県各地で活動を行う方々のプレゼンも同時に行われました。

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恵那暮らしサポートセンター」で移住相談などを請け負う、地域おこし協力隊の須原由里加さん。イベント当日は移住専門サポーターとして参加されていました。

以前マチノコトでも掲載した「“ジモトで働く”を考える〜恵那お座敷cafe〜」の企画も須原さんによって行われたものです。

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こちらは岐阜県の異業種4社が地場産業×テクノロジーをテーマに新商品開発に取り組んだ「光升(ひかります)」。檜升が持つ温かみや香りに加えて、日本酒がキラキラ光る構造になっています。

2013年9月、岐阜県大垣市にある大学院大学IAMAS主催の新商品開発を目指すアイデアソン・ハッカソンで結成されたチームから始まった光升は、現在活動に共感した人々から資金提供を募るクラウドファンディングを行っています。

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続いて登場したのは、岐阜県恵那市に本社を置く「明知鉄道」。国鉄明知線を引き継ぎ、1985年に誕生した全長25.1mのローカル線「明知鉄道」は、通常の乗客輸送業務に加えて、寒天列車や、きのこ列車といったグルメ列車としてのイベントも行っています。

最近では「リニアに乗ってSLに乗ろう!」という夢を実現するための「あけてつSLファンクラブ」も発足。国鉄明知線時代に走っていたC12形蒸気機関車復元のため、活動が行われているようです。

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こちらは郡上の「猪鹿庁」さん。郡上で猟師育成や、里山保全などの活動をされています。

中山間地域の課題である、里山の荒廃、野生動物による農作物被害の増加や猟師の担い手不足といった課題を、実践と行動から取り組む若者猟師チームは、2009年から現在に至るまで郡上の人財を育成するべく精力的に活動を行われています。

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イベント前日に取れたばかりの鮎を持参し、参加者に振る舞ったのは「長良川デパート」さん。

長良川流域で古くから育まれてきた食文化で現在も生産が行われている食と、作り手の想いをウェブ通販を通して、届ける活動を行っています。

「岐阜」の新たな魅力を知り、また各々の日常生活へ

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ご覧頂いたように、今回の「岐阜ナイト in Tokyo」では、ゲストトークだけでなく、岐阜で多様な活動を行う人々が、自分たちの活動を東京という土地で行っていきました。

「岐阜」を共通項に集った人々とはいえ、「岐阜」に対する想いの熱量はさまざま。そのなかで先に岐阜に魅力を感じ、精力的に活動を展開する人々による発信は、参加した人たちに何らかの影響を与えたはずです。

岐阜が好きな人や、地元で暮らしたいと考える人、岐阜で何か生業を起こしたいと考える人。岐阜県「外」の場所で「岐阜」という共通項で、さまざまな魅力を持った人々が集まり、岐阜の魅力を広げていく場が生まれることは、非常に重要なことだと言えるのではないでしょうか。

岐阜で語る岐阜も重要ですが、遠方で語ることの出来る場所を作り出すことで、もともと関心や所縁を持った人々の受け皿としての働きはもちろん、新たに関心を持つ層を広げる役割も果たします。日常の延長線上に日々の生活のリズム、ペースを崩すことなく、地域に対する想いの熱量を高め、維持できる場は非常に重要です。

12月には「岐阜アラサー会議」が開催予定

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「岐阜ナイト in Tokyo」は、終了時間を過ぎても会話が止むことなく、名残惜しくも盛況のまま、クロージングを迎えました。集った人々が生んだ緩やかでありながら確かな繋がりが、今後どのように活かされていくのか期待してしまいますね。

今回は東京という場所で「岐阜」をテーマに開催されたイベントですが、12月には「アラサー」をテーマに岐阜県で人々が集う場が企画されているそうです。さまざまなテーマで同じ地域に関わる人々の縁を結ぶ場を猛ている岐阜の事例は、どの地域でも参考になる事例ではないでしょうか。

まずは場を開いてみること。出来ることから少しずつ、地域の担い手を増やしていってみてもいいかもしれません。

えぐちはると

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