マチノコト

2015.2.7

生きたい場所で生きるために−−地方で暮らすことのリアルを実践者に聞いてみる第一回「移住フェス」が開催

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サイボウズ本社オフィスで、「移住フェス」の第一回が開催されました。「移住フェス」は、地方・地域での暮らしに興味のある人たちが集い、実践者からリアルな話を聞くイベント。昨年9月に第0回が開催され、今回から正式にスタートとなります。

「移住フェス」を企画している「エリアル」は、ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会が昨年主催した「社会を変えるチームを創造するフューチャーセッション」から生まれた団体。フューチャーセッションから生まれた活動はこれまで何度かマチノコトで取り上げてきましたが、新しいプロジェクトの起こり方として注目です。

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第一回の今回は、全国各地で活動している団体が会場に訪れて活動の説明を行い、参加者と交流を行いました。参加した団体は、「東北開墾」「ヤマガタ未来ラボ」「小布施若者会議」「空村」「FoundingBase」「アズキノイス」「京都移住計画」「福岡移住計画」「ココロココ」「small design center」「カホン」など様々。それぞれの活動を簡単に紹介していきます。

東北開墾

東北食べる通信

東北開墾は、食材と情報誌で生産者と消費者をつなぎ、新たな形のCSA(Community Suppored Agriculture)を作ろうという「東北食べる通信」を手がけている団体。僕も一時期購読していたことがありますが、素敵な雑誌と一緒に毎月食材を届けてくれます。

ヤマガタ未来ラボ

ヤマガタ未来ラボ

ヤマガタ未来ラボ」は、山形にUIターンしやすい環境づくりに取り組む団体。県外と県内をつなぐような情報発信を行い、多くの人に自分なりの山形との関わり方を考えてもらおうと活動しています。

小布施若者会議

小布施若者会議

マチノコトでも一度イベントの開催情報を掲載した「小布施若者会議」からも参加。小布施は外から多くの人が訪れるようになっており、定住者、移住者を増やす活動をしながらも、この町に関わってくれる人を増やすべく高校生向けのサマースクール「H-LAB」などの活動も実施しています。

前回の「小布施若者会議」を見学させてもらいましたが、全国各地からかなりの人が参加しており、かなりの熱気がありました。現在ではこの活動に影響を受けた活動が全国に生まれ始めています。

空村

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「空村」は最近マチノコトでも記事で紹介した空き家再生プロジェクト。愛知県津島市にある長屋群をリノベして、ひとつの村を作ることに取り組んでいます。特徴的なのは空き家再生の経験をもった人材を育てていくことで、全国に広がる空き家問題を解決できる人材を輩出することも視野に入れている点。

FoundingBase

FoundingBase

FoundingBase」は、都市部の若者を地域に送り込み、「首長付」のポジションで地域課題を解決するための新規事業に取り組んでもらうというプログラムを実行しています。現在、活動しているのは、東京、島根の津和野町、岡山の和気町など。「FoundingBase」の活動は、これまでマチノコトでも取り上げてきているので、こちらも参考にどうぞ。

アズキノイス

小豆島と東京に拠点を置いて活動している「アズキノイス」。地域と旅人をつなぐ「まちかどギルド」の「小豆島ギルド」として、島を知ってもらい、関わってもらうためのきっかけづくりを行っているそうです。

京都移住計画&福岡移住計画

「京都移住計画」は、京都で暮らしたい人の想いをカタチにする移住応援サイト。「福岡移住計画」は、福岡に移住する人の仕事や住居、コミュニティへの参加をサポートする活動。双方とも、これまで何度もマチノコトに登場していただいています。

ココロココ

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ココロココ」は、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をテーマにしたウェブマガジン。・都市から千穂への移住、地方と都市の交流のきっかけ、拠点となる人やコミュニティを紹介している媒体です。マチノコトとはとても相性が良さそうです。

small design center

small design center」は、バウムが運営する東京と地方をつなぐをコンセプトにしたスペース。農家や町、村などの地方行政や地域おこしに関わる人々、そして、彼らと仕事をしてみたいクリエイターのための場として2014年の年末に、東京の日本橋にオープンしました。

カホン

カホンの取締役COOとして活動されている宮先さんは、東京と沖縄の二拠点居住を実践されている方。石垣島に魅せられ、会社のブランチを設立したそうです。

各地域での活動の実践者の方々に加え、スポンサー企業としてクラウドソーシングサービスを提供するランサーズ、無料でネットショップを開設できるBASE、空いている部屋を貸し出すことができるサービスAirbnb、車の空席をシェアするHitchmeといった企業が参加していました。

各団体と参加者の交流

各団体の紹介が終了すると、次はそれぞれの場所に分かれて、気になる活動についての話を聞く時間に。東京の会場に足を運べている参加団体ばかりではなかったため、中にはオンラインで遠方から参加する実践者の方もいました。

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実践者同士によるトークセッション

最後は実践者同士によるトークセッション。トークのテーマは地域の「関係人口」について。

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大徳さん「小布施では交流する人を増やす活動をしています。こうした交流を生んでいく活動というのは、計画を立てることがなかなかできません。計画ができないということは、行政が担うことは難しい。そこで、外の若者の力が必要になり、それをサポートする町民の力が大切です。小布施町役場の人数は100人、町民は1万人。町民が受け入れてくれれば実行できます。交流を増やしていき、地域の活力のためには役場、若者、町民、それぞれの協力が必要になります」

田村さん「福岡移住計画から生まれた縁がきっかけで、移住計画は島根の雲南市でも始まっています。現地の方に呼んでもらって島根を訪れたときに、移住や定住はどこから始まるかという話をしました。その中では、観光と移住の間が必要だという話になり、それは関係なのではないか、という話も。京都も多くの方は観光で訪れる土地。この観光に関係をプラスできるといいのではと考えています」

高橋さん「観光と関係の間の話は東北開墾でもよく話をしています。被災地支援活動がきっかけで関わり始めたり、帰りたいけど理由があって地域には帰れない出身者の人たちなど、地域と関わりたい人はいるけれどなかなか実現できていない状態です。移住までは踏み切れないけれど、何かができたらいいと考えている人たちのために何かを提供していきたいですね」

人が移住を決めるきっかけは様々ですし、決めるまでにもステップがいくつか存在しているはずです。いきなり移住を求める活動以外にも、「関係人口」を増やそうというアプローチをしていくことは今後地域にとって大切なこと。「関係人口の増加」と、そのための「地域との交流機会の創出」が、地域にとって重要になりそうです。

今回の移住フェスのテーマである「生きたい場所で生きるために必要なこと」に対しては、

高橋さん「地域との関係は浮気OKにしていく。そうすることで、一箇所以外にも関係できる地域を増やしていきたいですね」

大徳さん「日本はそれほど大きくありません。暮らす場所を選ぶのに、物理的な距離はそれほど気にすることはないと思います」

田村さん「曖昧さを許容することが大切だと思います。二拠点居住とかすっごく曖昧ですよね。現地の人には「中途半端だ」と言われるかもしれませんが、そういう曖昧さが必要なのではないかと」

とコメントされていました。

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当然のことですが、「移住フェス」に参加している人たちの移住への意欲や関心度の高さにはばらつきが感じられました。ただ、こうした「交流機会」が設けられ、地域との関係を結ぶきっかけが生まれることは、どのレイヤーにいる移住希望者の人々にとってもプラスになりそうです。

自分が関係していける地域はひとつではありません。自分はどの地域と関係を紡いでいきたいか、考えてみてもいいかもしれませんね。

junyamori

inquire Inc. CEO、NPO法人マチノコト理事。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。『マチノコト』の編集を担当する他、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員長、ローカルメディアネットワーク『IDENTITY』を運営中。『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』など複数のメディア運営にも携わる。

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