マチノコト

2014.6.17

地域の魅力を知ってもらうために:福岡県柳川市、移住希望者に最大一ヶ月家を無料で貸し出す移住体験プログラムを実施

水の郷、柳川市。福岡の南部にあるこの地域で、移住を促進する企画が始まっています。

もえもん家ハウス」と名付けられた施設は、柳川市への移住に興味があるけれども、移住前に柳川のことを知りたいという人を対象に一定期間貸し出し、実際に生活することで『やながわ暮らし』を体験できる場所だ。2014年(平成26年)7月いっぱいまでで、10日以上1か月以下で無料で移住体験による居住生活をすることができる。

「もえもん家ハウス」は、105平方メートルもある木造平屋で、市内の中心地に位置している。もともと空き家だった場所を市が寄付を受けて全面改修し、4月にオープンしたという。ダイニングキッチンや6畳と8畳の和室2部屋や風呂、トイレを備えたオール電化住宅だ。施設の裏には、柳川名物の川下りの掘割が流れており、観光客らを乗せた舟を眺めることができる。

最低限の家具や家電、ネット環境は用意されており、さらに、賃料や水道光熱費は無料のため、生活費にお金はかからない。そのかわり、体験期間中のブログやSNSの更新、体験期間終了後には、市からの調査や取材、PR活動へ協力し、市の同企画やさまざまな取り組みに対してフィードバックをお願いしているという。自身が移住体験を通じて感じたことが、今後の活動の参考になるかもしれない。

詳細は、移住体験プログラムのウェブサイトを参照してもらいたい。

自然豊かな場所と都心へのアクセスの良さから、住みやすい場所を目指したい

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この移住体験企画の狙いや趣旨について、担当者である柳川市役所企画課係長の野田学氏からコメントをもらうことができた。

「市内の掘割を優雅に巡る川下りなど、観光地として知られている柳川ですが、福岡市から電車で45分と比較的近く、福岡への通勤も検討できる地域です。市内は一次産業が盛んで、地元で採れる農産物や有明海から水揚げされる海産物など新鮮な食材の宝庫です。また、スーパーなど日常買いができる施設は中心部にコンパクトに集約しており、医療機関も充実しているなど、あまり知られていないかもしれませんが、とても住みやすい地域です。

今回、市が所有する戸建住宅を生活体験の場として1カ月を上限に貸し出しを行い、実際に柳川の生活を体験いただく中で移住イメージを持っていただき、その後の市内への移住・定住に繋げていくことを目的としています。また、生活体験者によるネット上の情報発信や取材等への対応によるマスコミへの露出などを通じて、生活地としての柳川のイメージ醸成を進めていきたいと考えています」

どういう人に来てほしいですか、といった質問には「地域活性などに興味があり、地方への移住を検討していたり現在の仕事が柳川でも引き続き継続可能な人が好ましいですね」と答えていただいた。最近では、ネット環境が充実してきたこともあり、テレビ電話やテレワークなどによる作業ができる時代となった。都心から離れた場所で生活しながら、仕事をすることで、自分が暮らしやすい場所で生活できるようになるのではないだろうか。

最後に、柳川の魅力などについて伺った。

「柳川の自慢は、何と言っても先人の知恵の結晶である「掘割」です。今回、提供する住宅は掘割沿いにあり、川下りの様子を眺めることができる贅沢なロケーションです。また、柳川は独特の生態系を持つ有明海からもたらされる海の幸や、有明海に向かって広がる干拓地で生産される農産物など新鮮な食材の宝庫です。江戸時代から続く「中島朝市」ではこの新鮮な農水産物を購入することができます。

九州の中心地、福岡市まで電車で45分。都市の賑わいにふれたい時は、すぐに向かうことができます。あわただしく時間が流れる都会の暮らしに疲れた方や地方への移住を本気で検討している方、ゆっくりと時間が流れる『柳川暮らし』をこの機会に体験してみてはいかがでしょうか」

地方都市ならではの魅力を伝えるためにいまできること

柳川市は、他にも県の事業として職業体験と移住体験を合わせたプログラムも実施している。

ちくご移住計画2014 柳川編 ~「柳川」で神棚職人と川下りの船頭に学び暮らす3ヶ月~ – 福岡R不動産 http://www.realfukuokaestate.jp/chikugo-trialstay2014/07.html

これらの企画も、地方都市が持つ魅力を広く多くの人たちに伝えようとする取り組みだ。その先には、その土地の良さを知ってもらい、少しでも多くの人たちが生活してほしいという、市役所の人たちなりの努力を感じます。

他にも、柳川市は地域の空き家のデータベースである空き家バンクも公開しており、移住者や地域活性に活かそうとしている。こうした空き家バンクも、ゆくゆくはオープンデータ化することで、さまざまな可能性を秘めているかもしれない。

同じ福岡県内であっても、都心ではない地方都市である柳川市は年々高齢者の割合が増し、少子化や若い人たちの就職などによって東京や大阪などの都心へ出ていく傾向にあり、次第に人口減少にも見舞われています。こうした状況は、柳川市だけではなく全国各地で広がりを見せ始めています。こうした状況から脱却するためにも、地域で一体となって子育てをするなど、若い人たちが住みやすい場所にしていくことが求められます。柳川市以外にも、さまざまな地域が移住や若い人たちが集まるための取り組みを実践しています。

ぜひ、移住に興味がある人は、市役所に連絡してみてはいかがでしょうか。

柳川市公式ホームページ / 柳川暮らし体験事業 http://lib.city.yanagawa.fukuoka.jp/kurashi/ijuteiju/yanagawakurasi.html

江口 晋太朗

Shintaro Eguchi

編集者/ジャーナリスト。TOKYObeta Ltd 代表、マチノコト理事、inVisible理事、日本独立作家同盟理事。著書 『日本のシビックエコノミー』『ICTことば辞典』『パブリックシフト』など。1984年福岡県出身

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