マチノコト

2014.12.7

一人一人がクリエイティブに街の魅力を発信するーー東京のシティブランディングについて語られた「my Japan Conference」

my Japan Conference

11月7日、渋谷ヒカリエホールにて「my Japan Conference」が開催されました。

my Japanは日本の魅力を再発見し、クリエイティブの力で世界へ発信することがミッションに活動している団体。「日本」をテーマにした映像コンテスト「my Japan Award」を開催している他、「my Japan Conference」というカンファレンスイベントを開催しています。

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今回のmy Japan Conferenceのテーマは、「東京のシティブランディング」。ブランディング、アート、コミュニケーション、都市づくり、クリエティブ、デジタルなど様々な領域の登壇者が「シティブランディング」について発表しました。

外の目で見た魅力、内の目で見た魅力

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経済産業省クリエイティブ産業課 総括補佐の諸永裕一さんは、ミス・インターナショナルの人たちが渋谷を訪れた際、街中を歩いて自分たちが面白いと思ったものをリアルタイムにFacebookなどに共有していっていた様子を紹介しました。その際のYouTubeの映像はコチラです。

マチノコトでも度々触れている内容ですが、外の人の目を取り入れ、それを発信に結びつけていくこと。これは東京という都市の単位でも変わらないはず。

そして、東京をクリエイティブな街であると発信していく際にはミス・インターナショナルのような人たちに、彼女たちが持つフォロワーに向けて、直接発信してもらうことが価値になるかと思います。

最近はFacebook、Twitterの他に、Instagramという画像の共有アプリの他、YouTubeの活用も注目されています。こうした個人で発信力と影響力のある人に来てもらい、発信してもらうというのは、街にとって重要な視点になりそうです。

100tokyo

経済産業省は、「100Tokyo」というサイトを立ち上げていて、これはデザインやファッション、アート、食、先端技術、建築、観光地、宿泊施設、イベントなど、世界の人々に紹介したいモノをセレクトし、日英併記で発信しています。

こちらのサイトでは、独自のセレクションで集められた東京のモノ・コト・場所を紹介する他、ソーシャルメディアから「#100Tokyo」で投稿された写真を国内外から集めて掲載しています。

さきほどのソーシャルメディアの活用の仕方とうまく連動させることができれば、海外に向けてメッセージを発信することができます。規模は異なりますが、徳島県の神山町は「イン神山」というサイトで、その土地の事柄を発信していました。METIによる取り組みは東京以外のマチにとっても参考になる部分が多そうです。

シティブランディングの担い手

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渋谷ヒカリエの文化施設(8/ ヒカリエホール シアターオーブ)のフロアコンセプト作成を手掛け、2012年より渋谷街ブランド担当。渋谷における各種イベントを支援している東急電鉄 渋谷開発事業部の大友教央さん。

彼はいくつも行っている街のメッセージを発信していく「種まき」活動の中でも、スタートアップのビジネス支援について紹介。ビットバレーと呼ばれ、IT企業の集積地としての側面も持つ渋谷。新しく、そうした企業が登場するようにと、東急は色々なサポートを行っています。

大友さんは、シティブランディングの担い手は、「渋谷で活動するすべての人たち」だと考えていて、人々の活動を支援するためのアクションをとっていきたいと考えているそうです。「ひとつひとつの活動と、その積み重なりが街のブランドを構築していく」と語りました。

一人の行動で変化は起こる

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ロフトワークの林千晶さんが紹介したのはクリエイティビティとスペースの関係。ロフトワークの創業時期の話から始まりました。最初は、ニューヨークのブルックリンのDAMBOというエリアにオフィスを構えたロフトワーク。当時、そのエリアは不動産会社が意図的にクリエイターが集まる場所にしていたそうです。

家賃は安く、何をやっても良い環境。そこに集まったクリエイターたちは互いに作品を見せ合ったりしながら活動していったことで、エネルギーが集まるような場所になっていったんだとか。

エネルギーが集まり始めると、治安が悪かった場所にカフェやチョコレート屋さん、アイスクリーム屋さんなどお店が増え、徐々にエリアの雰囲気も変わっていったそうです。最初、一緒のスペースで作品を見せ合っていたクリエイターたちの活動は、今では「DUMBO Art Festival」として拡大して継続しています。

ロフトワークは最近柏の葉にオープンイノベーションをテーマにしたスペース「KOIL」を手がけています。ここでは空間にいくつかの役割を持たせており、空間をあえて広くとることで、人と人が出会う可能性を高め、偶然会話が生まれるような状況をデザインしたそうです。

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偶然生まれる会話から、アイデアやビジネスが生まれることがある。そのためにはセレンディピティが重要。そう林さんは語りました。

都市規模の変化も、ひとつのユニークな場からはじまる。そして、何かが生まれるためにはセレンディピティがコアになる。最後に、林さんがメッセージとして伝えたのは、空間もメディアになるということ。

今は世界からそのエリアの特定のスペースを目的に人が訪れることもある時代。空間が持つ力と影響力を活かすことで、街のブランディングにも影響を与えることができるのではないでしょうか。

一人一人の妄想を

締めを飾ったスマイルズ代表の遠山正道さん。仕事にも関係するような3つのメッセージをプレゼン内で伝えていました。

  • たのまれてもいない仕事
  • なんでこうなっちゃうの?
  • 未だ見ぬ姿へ

クライアントワークではなく、自分たちがやりたいと思ったことをやる。「なんでこんなことになっているんだろう?」と疑問に思うような課題を解決できないか考えてみる。スマイルズでも心がけていることを紹介していました。

そして、3つ目の「未だ見ぬ姿へ」では、今はまだ生まれていない新たな価値観や考え方を目指すということに触れていました。例として出ていたのは、逆上がりの例。逆上がりができて終わりなのではなく、その後前にスライドするような新たな動きを付けても面白いのでは?という提案(前日に思いついたそうです)も行われ、会場が沸き立ちました。

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スマイルズでは、東京オリンピックの開催にあたり、選手だけではなく人々もチームであるというメッセージ「2020 Tokyo Team Bench」を発信しています。これは人々もベンチの控え選手として、一緒に頑張っていこうという呼びかけ。来年にはクリエイターの方々とイベントを開催予定だそうです。

この他にも、遠山さんの妄想だという東京のブランディングをするためのアイデアの共有が行われました。東京都の歌「TOKA 23」を作ってはどうか?というものや、膨大な数のビルに垂幕をかけ、それを小説にする「東京垂幕小説」というアイデアなど。

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課題をチャンスだと思い、頼まれないことに取り組み、今はまだ存在しない状態を作り出していく。遠山さんはこうしたあり方を一人一人が目指していくことで、東京のシティブランディングが行われていくのでは、と語りました。

今回のイベントでは、多くの方々が東京のクリエイティビティとそこに暮らす一人一人の可能性について色々な確度から言及しているという印象を受けました。

東京オリンピックが開催される2020年はひとつの節目とするには良い年です。今回の「my Japan Conference」は、そこに向けて自分なら何ができるだろうか?どんどん妄想してみて、実行していきましょう!という呼びかけの場だったように感じました。

自分たちの街を発信するために、自分には何ができるのか。これを機に考えてみてもいいかもしれません。

junyamori

inquire Inc. CEO、NPO法人マチノコト理事。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。『マチノコト』の編集を担当する他、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員長、ローカルメディアネットワーク『IDENTITY』を運営中。『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』など複数のメディア運営にも携わる。

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