マチノコト

2014.6.9

「ネイバーフッドデザインの現在地を考える」 – マチノコトオープンゼミ第1回 HITOTOWA INC.代表 荒昌史さん

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4月に第0回「行政職員・政治家のための勉強会」を開催しました。この勉強会の名前を「マチノコトオープンゼミ」とし、本日記念すべき第1回を開催しました。

「マチノコトオープンゼミ」では、コミニュティデザインに関わる様々な現場で活躍されているゲストの方から最新事例から学び、その後参加者同士で意見交換を行っていきます。

第一回のゲストには「Comunity Crossing Japan」の活動でもマチノコトとはよく一緒にさせていただいているHITOTOWA INC.代表の荒 昌史さんにお越しいただきました。

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会場は前回と同様、オープンを目前に控えた虎ノ門ヒルズ付近に位置する「リトルトーキョー」。多くの方に関心を持っていただき、20名以上の方々が参加してくださいました。

ネイバーフッドデザインって?

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荒さん「ネイバーフッドデザインは、都市にご近所付き合いを作って、社会の課題を解決しよう、という活動です。孤独な中での子育てや、無縁化社会、防災についてなど、都市には様々な社会課題が存在します。これを解決するためにコミュニティを作る活動をしています。」

HITOTOWAのネイバーフッドデザインでは、単身や2人暮らしの人々が暮らすマンションでつながりを作るイベントを開催したり、子育て世代が多いマンションの子育てリテラシーの向上のために保育士さんを呼んでイベントしながら、お母さん同士のコミュニティを作るサポートをしたり。地域・町内会の会長に地域のことを話してもらったりと、色々なイベントやワークショップを実施しています。特に集合住宅に対してアプローチしている理由については、

荒さん「都市圏に存在する集合住宅には管理会社などが存在しており、アプローチがしやすい。集合住宅にはコミュニティを作るためのアプローチがしやすいんです。また、将来的に都市圏では単身世代が増えることが予測されます。彼らは家族と一緒に住んでいないため、助け合うことができない。何かがあったときに助け合っていくために地縁にフォーカスして活動しています。」

とコメント。

価値観でつながるコミュニティとその課題

荒さん「かつて色々な地域のつながりやイベントごとが数多くありました。それが今では減ってしまい、地縁というものが感じられなくなっています。一方で、 シェアハウスなどコミュニティを前提とした集合住宅が増えてきていたり、それらを包括するエリアマネジメントという役割が生まれたりしてきています。人と人が繋がろうとするニーズは存在しています。」

これまでに強く存在してきた人と人の間にある「縁」。

  • 血縁
  • 地縁
  • 社縁
  • 学縁

といったものを紹介し、これらの縁が薄くなりつつあることを荒さんは紹介してくれました。そして、この薄くなってきた縁を埋め合わせるように生まれてきた縁が「価値観縁」であると言います。

荒さん「価値観をベースにしたコミュニティが誕生してきています。ただ、価値観縁には弱い部分があって、それは物理的な距離が関係ないがゆえに、有事のときに助け合えない ということ。なので、自然発生に任せるだけではなく、ある程度働きかけてコミュニティを生み出そうとすることが重要です。」

助け合える関係性

これまで存在していたコミュニティの力が薄くなってきており、既存のコミュニティによって保たれていた機能を代替するために、コミュニティを作る。そのコミュニティを作るためにHITOTOWAはイベントやワークショップを開催しています。

コミュニティができることは、趣味が充実したり学びがあったり、孤独な子育てや無縁化を解決することになったりします。こうした助けあいができる関係性が生まれることは、震災の際にも効力を発揮します。

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3大都市圏では震災が起きたときの被害が大きくなることが予測されています。都市で震災が起きた際にその被害を抑えるためにも、都市にコミュニティを生み出す必要がある、そう荒さんは語ります。

【参考記事】

適度な距離感の人間関係

ただ、いかにコミュニティが重要だとはいえ、関係の濃い人間関係にはめんどくさいことも出てきまうのが人間というもの。濃い人間関係は村社会的な、しがらみが生まれてしまいやすい傾向がある、と荒さんはコメント。

荒さん「しがらみになってしまわないように、良い塩梅を心がけること。しがらみと孤独の間をデザインすることがネイバーフッドデザインだと思っています。」

このあたりについては質疑応答の時間に、「コミュニティの濃淡を意識することが重要だ」という話だったり、「コミュニティに参加できる人を選ぶ、エントリーマネジメントが重要」だという話にもなりました。

ネイバーフッドデザインの現在地

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最後に、住民がオーナーシップを発揮することやそのコミュニティ内で継続的なイベントが開催されることなど、本当に住民と地域が助け合える、地域課題を解決できる力のあるコミュニティを作っていくために求められることがシェアされました。

次回開催の予定

コミニュティデザインに関わる様々な現場の話を伺い、一緒にコミュニティについて考えてみる「マチノコトオープンゼミ」。次回は7月中旬に「まちづくりとアートプロジェクト」をテーマに開催する予定です。

詳細なイベント情報はまたマチノコトで紹介するので楽しみにしていてください!

junyamori

inquire Inc. CEO、NPO法人マチノコト理事。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。『マチノコト』の編集を担当する他、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員長、ローカルメディアネットワーク『IDENTITY』を運営中。『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』など複数のメディア運営にも携わる。

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