2015.8.14
日本の古都・京都。古くからの伝統的な文化財が現存する一方で、古くからの文化を生かしつつ新たな流行を取り入れた取り組みも多く行われています。
京都は嵐山や鴨川など自然豊かな観光地が多く、2014年には過去最大となる約5,564万人の観光客を記録。外国人からも人気を集め、世界でも有数の観光都市として知られています。
観光地としての華やかな部分が特徴的な京都ですが、裏にはその姿を支える人々がいるようです。
京都の四季折々の風景を楽しめることから人気の「保津川下り」。江戸時代から続く400年以上の歴史を持ち、皇族や海外の王族からも愛されたこの取り組みも、現在、多くの市民の活動によって守られています。保津川は、亀岡市保津町請田から京都市嵐山までを流れる河川。保津川には、景勝地としても人気を集める「保津峡」という渓谷も存在し、京都府立保津峡自然公園に指定されています。
かつて京都の豪商であった角倉了以が豊富な丹波の物資を京都に運ぶべく、保津川を開削。巨岩巨石が続き、急流の流れる保津川を整備し、丹波と京都を結ぶ動脈として船運が築かれました。
船運としての歴史は、現在の保津川の観光地としての姿につながっています。丹波亀岡から嵐山まで約16kmの渓流を熟練の船頭とともに下っていく「保津川下り」は、保津峡の四季折々の優れた景観を楽しむ旅として人気を集めています。
若い人たちやアウトドア好きの間では、専用のゴムボートに乗って激流を下る保津川ラフティングも、そのスリルと自分で操作する満足感から人気です。
歴史深くさまざまなアクティビティで人気の保津川ですが、近年ゴミの不法投棄が深刻な問題となっています。
ペットボトルや食品トレイといった生活ゴミだけでなく、なかにはチャイルドシートやブラインド、テレビや冷蔵庫のドアといった想像を逸するような大きさのゴミも捨てられているようです。
保津川はアユやアマゴといった川魚も多く生息する河川ですが、不法投棄による水質悪化も併発するなど、河川環境の保全が大きな課題となっていました。
そこで、2007年7月からNPO法人「プロジェクト保津川」が設立され、保津川流域の住民、各種団体、企業、行政とのパートナーシップのもと、保津川の環境保全を通じたまちづくりが行われるようになりました。
「プロジェクト保津川」は、毎月第3日曜日に保津川流域での清掃活動「クリーン作戦」をはじめ、あゆ狩りや川遊びといった「環境教室」、保津川に親しみを持つ機会を提供する「エコツーリズム」など、「清らかな流れを、次の世代に」を合言葉に、環境保全活動を行っています。
ウェブサイトやスマートフォンアプリを活用した「ごみマップ」では、どのような種類のごみが、どのような場所に、どれだけの量貯まっているのか提示され、実態の不透明さから進まなかった河川のごみ問題に対して新しい風穴を開けました。
「ごみマップ」の調査によって、漂着ごみの発生源が可視化され、1つ1つのゴミは住民の生活ゴミであると断定。調査結果は、亀岡市の総合計画として「漂着ごみの発生抑制事業」を行うなど、住民の意識の向上に結び付いています。
2012年から現在まで、NPO法人「プロジェクト保津川」と「京都新聞社」の主催で「AQUA SOCIAL FES!! Presents 保津川保全プロジェクト~歴史と自然にあふれる保津川を守ろう!~」が継続して行われています。
「AQUA SOCIAL FES!!」とは、トヨタマーケティングジャパンが自社のハイブリッド車「アクア」の社会貢献プロモーションとして展開している、一般参加型のプログラムです。
「AQUA SOCIAL FES!! Presents 保津川保全プロジェクト」では、毎回のイベントで100人以上の人が参加。保津川に残る伝統漁法「あゆ狩り」や、ハゼの仲間のゴリを捕る「ゴリ踏み」など、伝統的な文化を体験しながら、環境保全を学びました。
急流の岩場に漂着したゴミの清掃を行った際には、美しい景観を楽しみながら、生活ゴミや大型のごみを回収し、保津川の実態を学んでいきました。
「プロジェクト保津川」設立当時は、スタッフと地元の運送会社の数10人規模だった清掃活動も、現在は年間の参加者が1000人を超えるように。保津川を想う気持ちがもたらした行動は、着実に1人1人の心を動かし、現在の規模にまで成長しました。
華やかな面を持つ観光資源が抱える危機に対して、その問題を明示し着実に取り組みを継続していくことで、保津川に関わる仲間は着実に増えています。
子どもから大人まで異なる世代が交じり合い、地域のシンボルとされる場所をさまざまな側面から深く学ぶ機会が提供されていることは、非常に有意義なことだと感じます。
市民主導の取り組みが、行政を動かし先行事例となって他の市町村での動きを促進していく。地域独自の活動の発信によって、「環境保全」という大きな枠のなかで多様な動きが広がっていくといいですね。
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