マチノコト

2015.5.8

都市の公園に図書館をつくるーーアウトドアライブラリーで市民の交流を生む社会実験「Urban Picnic」が神戸で実施

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都市には、公民館や公園、図書館、広場など様々な公共スペースがあります。公共空間は広く開放され、市民が交流したりそれぞれの時間を楽しむための場所ですが、なかなか市民の声が生かされていないのが現状です。

子どもにお父さんお母さん、若者からおじいちゃんおばあちゃんまでが集まり、市民のつながりが生まれ笑顔に溢れるような公共スペースを求めている人はきっと多いはず。

市民から生まれたアイデアを取り入れ、市民が場づくりに積極的に関わっていく仕組みをつくれば、もっと魅力的で愛される場所が生まれるのではないでしょうか。

兵庫県神戸市で、市民発のアイデアが生かされた、公園を市民の交流の拠点とする社会実験プロジェクト「Urban Picnic」が行われます。

神戸市の東遊園地

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「Urban Picnic」が行われるのは、神戸市にある「東遊園地」。多くの人が利用するJR三宮駅近くの神戸市役所南側に位置し、まさに神戸の中心となる公園です。

こちらはもともと居留外国人のために1868年につくられた日本初の西洋式公園で、旧居留地の東にあることから「東遊園地」と呼ばれるようになりました。

阪神・淡路震災後は慰霊碑が創立され、毎年12月に震災犠牲者の鎮魂と神戸の再生を願って開催される光の祭典「神戸ルミナリエ」ではメイン会場となり、たくさんの人が訪れます。

毎年1月17日には追悼行事「1.17希望の灯り」が行われることから、神戸市民にとっては特別な想いのある公園となっています。

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公園をリビングルームに

東遊園地は行事の際は神戸市民が集まる場所ではありますが、その一方で周辺がオフィス街であることも影響し、日常的に市民が利用することが少ない公園でもありました。

神戸市民の心の中心である東遊園地が市民にとって親しみやすく魅力的になり、日常的に利用されるようになれば、公園が活性化するだけでなく周辺エリアの価値を高めるポテンシャルがある。

そう考えて立ち上がったのが、神戸市民である神戸電子専門学校校長の福岡壯治さん、神戸R不動産代表の小泉寛明さん、神戸モトマチ大学代表の村上豪英さんです。

公園の利用方法を話し合う中で出会ったのが、屋外の空間をまるで家のリビングルームのように活用する「アウトドアリビング」という考え方。公園を自然を楽しんだり散歩やスポーツをするだけでなく、市民が集まりリラックスして交流できるアウトドアリビングにすることで、東遊園地を市民にとって身近で親しみやすい場所にしようと思いつきます。

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3人で「神戸パークマネジメント社会実験実行委員会」を結成し、神戸市役所に昨年から1年かけて提案してきた努力が実を結び、神戸市と共催で「東遊園地パークマネジメント社会実験」と題してソフト面での公園の活用を企画することになりました。

公園に図書館をつくる「アウトドアライブラリー」

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今回の社会実験のコンセプトは、都市と自然を同時に楽しむ神戸発のライフスタイルを示す「Urban Picnic」です。

軸となる企画は、公園の中に図書館をつくるアウトドアライブラリー

6/1~6/14の2週間かけて行われるアウトドアライブラリーは、本棚オーナー制度で運営されます。

本棚オーナーは、それぞれ自分が決めたテーマに沿って市民から寄贈されたおすすめの本を集めて自分の本棚をつくります。2週間の会期中にはカフェが併設され、公園に訪れた市民はコーヒーを飲みながら本を読んで楽しむことができます。

開催期間中の土日には、地産地消の新しいプラットフォーム「EAT LOCAL KOBE」によるファーマーズマーケットも行われ、神戸の農家による生産物が販売されるそう。

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実行委員会事務局長をつとめる村上豪英さんは、こう語ります。

おすすめの本を提供して頂くことで、本棚オーナーや本を寄贈してくれた方の想いが集まります。と同時に来訪者にも、本の提供者のこころを感じながら、「おすすめの本」を楽しんで頂きたいと考えています。この図書館は、本を通して多くの市民の想いが交錯し、公園を自分たちの場所として実感するための試みなのです。

公共の場を市民と行政が共につくっていく

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本を通じて、訪れた市民と本の寄贈者、本棚オーナーが交流が生まれ、公共の場である公園を市民みんなでシェアしていくこのプロジェクト。

今まで行政が担ってきた公共スペースの運営に、市民発のアイデアが生かされ市民が「自分ごと」として積極的に関わっていく。神戸のように、市民の声を大事にし、一緒に街をつくっていこうという行政の姿勢は素晴らしいと思います。

このように行政と市民が共につくりあげていくことで、本当に市民に愛される公共スペースが生まれていくのではないでしょうか。

オープンな空間で本とコーヒーを楽しみながら、ゆったりと人々が交流する光景が都市のなかに生まれるのは、とても素敵なことですね。このプロジェクトが、都市にある公共空間で市民と市民のつながりを生み、どのように神戸の街を変化させていくかがとても楽しみです。

Urban Picnicの詳細

名称:Urban Picnic

日時:アウトドアライブラリー  2015年6月1日(月)~6月14日(日)
   ファーマーズマーケットエリア 2015年6月13日(土)、及び6月14日(日)
   各日8時〜20時 (ファーマーズマーケットは、各日9時~14時)

場所:東遊園地(〒650-0001 神戸市中央区加納町6-4-1)

ウェブサイト:http://urbanpicnic.jp/

現在、本棚オーナーを募集中です。募集詳細はこちら

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工藤瑞穂。 「soar」プロジェクト代表・編集長、「HaTiDORi」代表、ダンサー、元日本赤十字社職員。1984年青森県生まれ。宮城教育大学卒、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。NPO法人ミラツク研究員、Webメディア「マチノコト」ライター。

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