マチノコト

2015.3.18

地域に人と仕事の好循環を生み出すためにはーー「地方創生・ベンチャー会議」で各地のプレイヤーが語る

ベンチャー企業の支援を実施しているトーマツベンチャーサポートが主催、スタートアップ都市推進協議会が共催となって、「地方創生・ベンチャー会議」が開催されました。

最近、マチノコトの取材で各地に行ったり、地域で活動をしている中で、「起業」についての話になることが多いです。私はまた別の媒体で「起業」や「ベンチャー」に関して取材しているのですが、最近、この2つの領域がリンクすることが増えてきているように感じます。

地方と起業

地域の課題を解決する、という話の場合、起業やビジネスといった言葉に違和感を持つことは少ないかもしれません。ただ、地域に移住するといった話をするときにも、起業やビジネスについての言葉が出てくると少し違和感をもたれる方もいるのではないでしょうか。

地域には雇用がないことも多く、、いや地域に行きたいと考えている人が「働きたい」と思う仕事がないと言い換えてもいいかもしれません。地域では暮らしたいけれど、仕事はない。そんなときどうしたらいいのかと考えると、諦めるか、自分で仕事をつくるしかありません。

前置きが長くなってしまいましたが、地域のことを考えるときに「起業」についても考えることは大事だと思っているわけです。大きなビジネスでなくとも、自分で事業を起こす。それができる人材が求められているように思います。

地域で起業に携わっている人々

さて、話は戻って「地方創生・ベンチャー会議」について。会場に到着するのが遅れてしまったため、2つ目のトークセッションから参加。トークテーマは「地方創生に向けた人の流れと起業」。

ゲストで登壇したのは、合同会社パラミタ代表の林篤志さん、NPO法人まちづくりGIFT代表理事の齋藤潤一さん、サーチフィールド取締役の齋藤隆太さん、シナプテック代表取締役の戸田達昭さんの4名。

IMG_0001

林篤志さんは、マチノコトでも何度か紹介したことのある土佐山アカデミーの立ち上げや、最近始まった東北オープンアカデミーの運営に携わっている人物。

齋藤潤一さんはシリコンバレーでITスタートアップで働いた経験をもち、現在は宮崎でまちづくりの活動に関わっています。マチノコトでは、齋藤さんが手がけた地域資源「飫肥杉(おびすぎ)」に関するクラウドファンディングプロジェクトを取り上げました。

もうひとり登壇した斎藤さんは、マチノコトでも度々紹介している地域クラウドファンディング「FAAVO」を運営しているサーチフィールドで、FAAVO事業の責任者をしている方です。

バイオ、エネルギーベンチャーであるシナプテックを創業した戸田さんは、山梨県出身。会社を経営しつつ、教育方面や地域に関する活動をされています。

人と仕事の好循環をどう生むか

パネルディスカッションで話合われたのは、「どうしたら地域に人と仕事の好循環を生み出せるのか」という問い。

林さん「今、地域に行きたいと考えている人のほとんどはどの地域に行くかは決めていないと思います。地域に行くことを検討している人が気にしているのは、どんな人が集まっているのか、何ができるのか、何にチャレンジできるのか。なので、地域の魅力を発信していても仕方がない。まず来てもらわないと魅力は伝わりません。

そういう現象が起きていることを理解する必要があります。今、地域に行きたいと考えている人は、移住者というよりは移民的な発想をしていると思っています。都市ではない新天地を求めている人たち。その人たちのニーズを掴み取れるかどうか」

まちづくりGIFT 斎藤さん「やはり、新しい資本主義を作るしかないと思います。情報と経済しかないです。情報を制して経済を動かす。おじちゃんたちができないことを、僕らがやる。ただ、シリコンバレーを作るのは難しいと思います。

なので、大切なのはぼくらが楽しむこと。昨年はクラウドファンディングで1000万円くらい売り上げましたが、これを1人でやるのはしんどい。なので、今は人を育てています。人をどんどん増やしていって、あとはその地域の人と協力できるようにすること」

FAAVO 斎藤さん「ぼくは地方出身者を狙うべきだと思います。やはり、その土地の出身者は帰ってきやすい。まずここを狙うこと。私たちは今後、出身者を地方に流すことをやっていきたいと思っています。

あとは、その地域の人とつながること。人のつながりが雇用を生み、雇用が集積されると街になり、街が仕事を生むという循環。そして、仕事が人を呼んできています。ただ、街の強者とズレが生じている地域もあります。外から来た人が地域に溶け込んでいくことも大事ですね」

戸田さん「ぼくは「らしさ」が重要だと思っています。企業誘致などは、方法論で勝負すると負けます。立地条件や風土など、地域の遺伝子的なものに依拠すること。ぼくらは山梨らしさを出していこうとしています。

あとは、地方創生というと、新しい会社を作ること、起業などを考えがち。新しい価値を作るという話だと、既存の企業にフォーカスすることも重要。行政の方々はどこに投資していくのが的確かということをしっかり考えていただきたいと思います。教育に関してはひとづくりのビジョンを描くこと」

コーディネーターの必要性

成功事例が増えてきたといっても、規模や特徴など地域には違いがあります。内側に居た人間と、外側から来た人間。その2つが同じようになろうとすることは難しい、という話が登場していました。

移民的に地域に行きたいと考えている人は、スピード感をもって物事を進めたいと考えています。ただ、地域はそのスピードについていくことは難しい。すでに地域において信頼を構築している人が両方をサポートしていくことで、物事がスムーズに進むようになるかもしれません。

冒頭で紹介した「起業」を考える人だけではなく、コーディネーター的な存在もセットでいることが大切になりそうですね。

junyamori

inquire Inc. CEO、NPO法人マチノコト理事。1987年2月生まれ、岐阜県美濃加茂市出身。『マチノコト』の編集を担当する他、一般社団法人HEAD研究会フロンティアTF副委員長、ローカルメディアネットワーク『IDENTITY』を運営中。『THE BRIDGE』『マチノコト』『soar』など複数のメディア運営にも携わる。

コメント

コミュニティに参加する

ページトップ